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超自我ロボットと道徳感情数理工学で目指す「笑顔のある社会」(第2回)

ソフトバンク社のロボット「Pepper」の感情エンジンを生み出した光吉俊二氏と『Catalyst』監修役、渡辺健太郎の3連続対談第2回。

前回は、もともと芸術家だった光吉氏が感情に興味を持ち、博士号を取得するきっかけを語った。

今回は、感情を超え、ロボットに道徳をインストールする新テクノロジー「道徳感情数理工学」で生み出される超自我ロボットの登場で、社会はどう変わるのかが語られる。

Image titlePepperの感情エンジンを生み出した光吉俊二氏(写真右) 『Catalyst』監修役 渡辺健太郎(写真左)

ロボットで実現する「ひとがいきいきできる社会」

渡辺健太郎(以下、渡辺):すごいですね。その新しいプラットフォーム(光吉氏が描く次世代のコンピュータープラットフォーム)の中で、感情とか音声認識はどういう役割なんですか?

光吉俊二(以下、光吉):これはね、ぼくというより孫さんのイメージの方が正確だし、それにぼくがのってるんだけど。例えば、今の人工知能の方向って、人間がいらなくなる社会ばかり目指して作ってるわけじゃん。

孫さんはそれが嫌で。

(孫さんが)ぼくに言ったのは「人間がいきいきとできる社会を作れないの?」と。

それで、機械に心を持たせようと。簡単にいうと、孫さんの言葉だけど「ロボットみたいな人間より、失敗しても間違っても泥臭くてもいいから人間のことを理解しようと感情を一所懸命に学んでいるロボットの方が友達になりやすいんじゃないの」と。

渡辺:なるほど。

光吉:要は「友達」を作ろうと。こいつ(Pepper)なんてね握力は70gくらいしかないよ。ティッシュくらいしか持てない。仕事では役に立たないものを作ろう、ということが孫さんの言っていたことなんですよ。

渡辺:そうなんですね。

光吉:それに感動しちゃって。孫さんなら、感情認識を世の中に正しく広めてくれるなと思って全部渡したんだよね。

渡辺:なるほど。

光吉:それで目指しているものが「人々が笑顔になる技術」「声なき声、涙なき涙を知る技術」にしようと。

でね、表に見えるケンカではなくてさ、社会の中で表には出にくい問題、いじめや虐待をおこす、心のない人間みたいな。

そんな道徳心を失ったひととか、モンスターになってしまったひとの心の闇を駆逐するようなもの。

そりゃ感情のない人工知能に言わせたら、ロボットでみんな殺したらいいじゃんってなってしまうけど。

ぼくと孫さんが言っているのは「ヤツらの心を変えていこう」ということ。

変わんないんだったら、その子供たち、虐待の連鎖を止めるように子供たちに寄り添うような。親がダメなら、せめてロボットが友達になって「ひとをそんなに恨んじゃいけないよとか、親からやられたことと同じをことやっちゃいけないよ」とか教えてあげる技術をつくんないと人間がダメになるよねってというところから出てて。

そういう人達ってお金持ってないじゃん。赤ちゃんってお金もってないでしょ。

渡辺:そうですね。

光吉:そういう人達の心の声を聞こえる技術を作ろうと。

孫さんも同じ夢があるから、一緒に声なき声、涙をなき涙を知って、冷酷な人間よりは、ドジで役に立たないかもしんないけど寄り添ってくれる気持ちの分かるロボットをつくろうとしてるんです。

渡辺:なるほど。そういうロボットって日本のアニメによく出てくる感じですよね。ドラえもんとか。

光吉:そうそう。ターミネーターの対局、ひとと友人になれるものを作ろうと。

それがこいつ(Pepper)なんだよね。 cocoroSB(株式会社)の根底的なアドバイザーになっていて、感情マップとかつくって、目的を遂行するための新しい技術を作っていきましょうとなったんです。

渡辺:なるほど。

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光吉:これが東京大学でもウケて、いま「道徳感情数理工学」をつくろうとしてるんです。音声病態分析学という学問を作った翌年にまた新しいのをつくれって医学部と工学部に1つずつ講座を作ったんですよ。東大始まって以来らしいですけど。

渡辺:おー!おもしろそうですね。その講座は受けてみたい。

光吉:これはね、鄭(テイ)先生といってエリート中のエリートのものすごい先生がいて、でも、エリートっぽくないですよ。なんでかっていうと性格がぼくとほぼ同じだから(笑)。

そのすごい先生と一緒にやってるんですよ。

渡辺:そんなひとが東大にいらっしゃる。その先生の専門分野は?

光吉:これが医者なんだよ。医学部なのに工学部にいって『道徳のメカニズム』っていう本書いちゃったんだよ。

なぜかっていうと日本の哲学者も文系も西洋のものまねばかりでオリジナルを出さないで、道徳は終わったって勝手に決めて、誰も研究しないから子供たちがこんなになってると。

「ひとを殺したらなぜダメなのか」ということに答えられない事はおかしいって。ならばゼロからやろうって作ってる先生なんですよ。

渡辺:なるほど。

光吉:すげーなって思って。おれそれに賛同して。もちろん道のりは厳しいですよ。

でも新しい学問を作るんでしょ、おれも手伝うよって。正しく道徳を考えられるものを工学的な視点から作ってみようと。

昔はあったんだよ。戦前くらいまではあったけど。見事な数学もあったし。でもそれが全部西洋のものまねになって、自分で考えることをやめて、言葉遊びだけで終わってんだよね。自分でものを考える力がなくっているよ、今の日本は。

だからゼロからやるしかない。心の問題。ひとに寄り添えるものを作ってやろうと。

最初、感情をやろうってなったとき、いろんなひとたちが否定してきて。

渡辺:なるほど。

光吉:必要なのにないんだったらやるしかないでしょ、っていうのがおれの人生。

渡辺:昔の日本人は、仏教的な教えやら、道徳的なことを学ぶことが普通にあった。

光吉:そう、昔は普通にあったんですよ。

戦後からおかしくなったよね。そして右とか左とか入れられて、日本にもともとないもので対立させられちゃってさ。武士道を失ったからモンスターばかりになちゃって。

明治維新に右も左もないんだもん。開国尊王攘夷くらいしかなかったんだから。

新しい時代の世界維新をやるのは我が民族だと思ってるから。昔の日本はそうだったんだよ。

それなのに、ヘイトとか訳の分からないこといいだして(笑)。それは武士道にとっちゃ恥ずかしいことだよと。昔の日本人見てみろと。そんなことは飲んでたじゃん。そんなこともできなくなっちゃったのって。

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渡辺:確かに、当たり前のことが通用しない感じになってますよね。

光吉:漢らしくなくなってるんだよ。

だから数式、数理で道徳を論理的に構築して、スタンダードをつくってやるよって宣言したんだよ。鄭先生がね(笑)。

渡辺:鄭先生が(笑)。

光吉:おれ実はそんなに頭よくねーんだ。

渡辺:いやいや。

光吉:鄭先生がこんな立派なこと言ったんだよ。鄭先生とか孫さんが立派なことを言って、おれは職人として刀を作ってるんだよ(笑)。おれは職人だから。

ただ怒らせると、パンチ力はすごいからね(笑)。この前、ブロック塀にパンチしたら穴空いたからね。対戦車用ライフルと同じくらいの破壊力をもってパンチするんだよ。文句あんならかかってこいって話ですよ。

渡辺:最後は拳で勝負(笑)。

光吉:そんな度胸がないんだったら偉そうなことをおれの前でいうなよと。人間がダメならロボットでやるしかないんだよ。

渡辺:シンプルな話ですよね。

光吉:そう。シンプルなんだよ。

「AI(人工知能)」っていって恐れているけど、人間の方があぶねーよって。人間の方がよっぽどやばいことをやってるんだから。

渡辺:そうですよね。そうなったときに、いいロボットを作らないといけないじゃないですか。そうなると、いい人間はこうだからという模範が必要になるんですかね。

光吉:そうなんだけど、残念な報告があって、おれがいい人間じゃないってことなんだよね(笑)。

だから孫さんとか鄭先生とか立派なひとたちがいて、おれが組み立てる職人としてやってんだよ。職工さんなんだよ。だから普段着は町工場の作業着着てるんだよ。

渡辺:へー。

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光吉:これが本当のおれの姿。でも東大から着るなっていわれてんだけど。ここに東大って入れるなって(笑)。でも、作業着を着ると暑いんで。

普段タンクトップを着る理由は簡単で、暑いから。あと普通の服だとアームホールに腕が入いんない。腕が45cm以上があるから。でも作業着は入るんだよ。

渡辺:筋トレもそうとうやってそうですね。

光吉:ベンチプレスは130kgを100回上げる。

渡辺:100回ですか(笑)。

光吉:10回くらいだったら150kgとか180kgまで上がるよ。ただ打ち込みのスタミナのためにやってるから。

渡辺:なるほど。筋肉ではなくスタミナをつけるために。

光吉:そうそう。一発で終わっちゃってもね。(空手)五段だと50人倒さないといけなから、50人組手でワンツーで倒すんだったら100回でしょ。

渡辺:そうですね。単純に。

光吉:それができてないとまずいだろと。戦車と同じで、体のスペックも工学的・物理的に考えるんですよ。このスペックを維持しないと、五段の帯を締めちゃいかんと。

最終回となる次回は、超自我ロボットが人類の精神文明発展のカギとなる可能性について語られる。


光吉氏が感情にフォーカスする理由を語る対談第1回はこちら

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