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煽られない幸福論ーー自分らしい幸せのカギは「第二の脳」にあった

「◯◯を食べれば健康になれる」、そんな万人受けする健康法ではなく、自分のからだの個体差を踏まえてDIY的に健康にアプローチする「バイオハック」。その実践者が、『Catalyst』のまわりで増えている。
*「バイオハック」とは?:「バイオハック」のススメ

オンラインメディア『TABI LABO』の代表、久志尚太郎さんもその一人。その効果はてき面のようで、「おかげで最近、めちゃくちゃ幸せ」なのだそう。今回はそんな久志さんに、自らが実践するハックを尋ねる。

話すうち、実は久志さん、バイオハックを「ビジネス」としてもとらえていることがあきらかに。その構想も含め、久志さんのバイオハック仲間であり、『Catalyst』監修役の渡辺健太郎との対談でお送りする。

株式会社TABI LABO 代表取締役 久志尚太郎株式会社TABI LABO 代表取締役 久志尚太郎
中学卒業後、単身渡米。高校卒業後、起業。9.11のテロを経験し、アメリカ大陸を放浪後、日本に帰国。DELL株式会社に入社し、法人営業部のトップセールスマン、マネジャーとして活躍。退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。その後東京に拠点を移し、2014年に株式会社TABI LABOを創業し、オンラインメディア『TABI LABO』を公開。同サイトは、月間アクティブユーザー数900万以上に成長中

幸せは頭だけでなく、腸やからだでも感じるもの

ー久志さんはどんなバイオハックを実践されていますか?

久志 唐突ですけど、最近、僕、めちゃくちゃ幸せなんです。

一同 (笑)

久志 でも、ほんとに。理由はすごく単純で、「家の日当たり」。寝室に大きな窓があって、朝になるとちょうどそこに太陽が上ってくる。だから、毎日、朝日で目を覚ます生活をしていて。おかげで、最近体調はいいし、体内時計も正確にまわっている感じ。

渡辺 日光を浴びてセロトニン(*)が出てるからだよね。僕もオフィスや会社の合宿場所を選ぶときは、日当たりを大事にしてる。ビンちゃん(久志さんの愛称)は前、宮崎でスローライフをしてたと思うけど、そのときと比べて、今東京で住んでいる場所の環境とか体調の変化とかどう?
*心の安らぎにも関係する三大神経物質の一つ。「幸せホルモン」とも呼ばれる。

久志 それが、東京に引っ越してからのほうがいいんですよね。日当たりで言うと、実際宮崎よりも東京のほうが、年間の日照時間って長いんですよ。宮崎の家は日当たりが悪かったので、それも大きな理由かもしれません。

渡辺 そうなんだ。でも、田舎よりも都会にいるときのほうがコンディションがいいって、だいたいの人にとっては意外だろうね。

久志 僕だって、宮崎にいたときは「東京には ”絶対” 戻らない」と決めてたんですよ。心体に悪いと思ってたんです(笑) でも、東京にいると刺激も多いし、アイデアをひねり出したいときはサウナや近くの公園に走りにいけばいい。家の日当たりも最高にいいから体調もいいんですよね。

渡辺 最近はリタイヤした年配の人ではない、若い人でも「念願の田舎ぐらし」とか言うじゃない。あれって単に、都会ぐらしでくらったストレスの反動なだけな人がほとんどだと思うんだよね。都会でも日当たりのいいところに住んだり、もしくは都会と田舎、それぞれに拠点をかまえれば、快適なくらしはできるのに。

久志 田舎暮らしは別には悪いと思わないんです。ただ、田舎にいくこと=理想というのは、少し違うと思うんですよね。

渡辺 そうそう。「毎日忙しくはたらいて貯め込んだストレスを、年に一回のバカンスで発散しよう」という発想と同じ。それでは、普段のストレスも体調不良もリセットできないからね。本当に体調をよくしたり、パフォーマンスを上げたいなら、日常の要所要所でリセットしていくことが大事で。

久志 僕、自分が失敗したからわかるんですが、「よし、田舎に引っ越すぞ」くらいの振れ幅をもつことは大事。なんだけど、実際にいきなり引っ越しちゃうとかは、結構極端なのかなと思います。まあ都会には「あの人がやっているから、自分もそうやったほうがいい」みたいな煽りがあまりにも多いから、煽られてしまう人の気持ちもわからなくはないけど。バランスがめちゃくちゃ重要な気がしますね。でも、最近はそういう人が増えた気がする。

渡辺 少し前に流行った「朝活」とかもね。早起きがいいとか、それ、人によるじゃんと。

久志 そんな感じで、僕、日当たりのいい場所に引っ越しただけで体調よくなったじゃないですか。それで気がついたのは、人が「幸せ」を感じるためにやるべきことって、意外とシンプルで、からだが喜ぶことをやればいいんじゃないかってこと。だとしたら、自分たちの幸福度なんてもっとロジカルに上げていけるし、実はちょっとした工夫でコントロールできるんじゃないかって思うようになったんですよね。

渡辺 ほんと、そうで。幸せって、人はこれまで頭や脳だけで感じるものだと思われてたんだけど、実はそうではないんじゃないかってことが最近わかってきた。「じゃあ幸せってどこで感じるの?」というと、「腸」。腸が喜ぶことをすると、人は幸せを感じられるんだよね。

久志 腸は「第二の脳」と言われますもんね。

渡辺 実際、僕の場合、「なんか体調わるいな」とか「気分がネガティブだな」っていうときは、だいたい腸というかお腹の調子がわるかったりする。最近、バイオハックを始めたら、体調はもちろんいいし、あと体重もコントロールできるようになった。簡単にダイエットできるようになったから、そろそろ自分の理想の体重を決めておかないとガリガリになってしまうくらい。

久志 そこまでいけるとすごいですね。健太郎さん(渡辺の愛称)はどんなバイオハックをやっているんですか?

渡辺 『Catalyst』の記事でも紹介したんだけど、まずは「ホルモン検査」。「コルチゾール」っていうストレスに対抗するためのホルモンがほとんど出ていないことがわかって、さらに成長ホルモンも枯渇してて、抗酸化力は弱り、しかも自覚してなかった乳製品の遅発性アレルギーが発覚したりと、それはもう散々な結果だったんだよ(笑) バイオハックに興味がある人は、何はともあれ、まずはこれから始めるのがいいと思う。

久志 僕もホルモン検査やりました。面白いですよね。乳製品って、健太郎さんとこれまで飲みに行ったこともありますけど、好物、カルボナーラでしたよね?(笑)

渡辺 そうそう。あと卵もダメなので、カルボナーラは最悪なんだよね。

久志 それからどうしたんですか?

渡辺 まず、アレルギーの食べ物を一切摂らなくした。乳製品がダメだから、それまで試していた「バターコーヒー」も止めたのよ。日本でも流行った『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』を読んで始めたバターコーヒーだけど、あのまま鵜呑みにして続けなくてよかった(笑)

久志 ああ、自分が乳製品アレルギーだと知らず、続けてしまっている人は多そう・・・。

渡辺 あとは、不足がちだったミネラルとビタミンを摂るためのサプリを飲んで、でもそれだけ。そしたら、あんまり時間が経たないうちに、昔食事制限とハードな筋トレをしていたときよりも体重が落ちていって、からだの調子もよくなっていったんだよね。

久志 すごいなあ。僕はまわりの自然派の友人たちの影響で自然療法にすごく興味があって、こんにゃく湿布、枇杷(びわ)の葉を使った自然療法とか。できる範囲で実験したいなと思っています。そして科学的にちゃんと効果を検証したい。

渡辺 枇杷の葉はお灸にのせるといいよね。

久志 あと、ツボも。

渡辺 ツボっておもしろいよね。僕もたまに鍼をやるんだけど、あれって痛みを感じている筋肉とは違うところに刺して治すでしょう。すごいよね。鍼師の人はどのツボを刺激すれば、どこの痛みを治せるのかわかってる。

久志 そうそう。ツボの効果とかメカニズムって、科学的にはまだよくわかっていないこともあるらしいんですけど、そこにはかならずロジックがありますよね。

渡辺 うん。今の科学では説明がつかないんだけど、臨床的、経験的には効果があることって絶対ある。

久志 そうやっていろいろ試して思ったのは、幸せを感じさせてくれたり、自分のパフォーマンスを上げてくれるものには、ツボもそうだけど「東洋的」のものが多いってこと。一部の治療法とか食べ物は、たしかに「あやしい」って思われてるけど、きっとこれからテクノロジーが進化して、何でも測れるようになると、そういう東洋的なもののバイオハック効果も明らかになってくると思うんですよね。

渡辺 逆に、いまは良いとされている医学が、実は幸せやパフォーマンスには関係なかった、なんてこともあるだろうね。

久志 ここでもさっきの「煽り」の話は出ますよね。

渡辺 と言うと?

久志 例えば、僕らが話しているツボにしても何でも、鵜呑みにしてやる必要はまったくない。

渡辺 そうだね。それと、何かを新しく始めるときに気をつけないといけないのが、その新しく始めること自体が、新たなストレスにならないようにすること。「またタスクが増えちゃった」みたいになったら、逆効果。

久志 ほんとそう。田舎ぐらしがいいのか、朝活がいいのか、マラソンがいいのか、そんなの人によるんだから。今はテクノロジーの力で何が自分に合うのかはっきりわかりますからね。

渡辺 ちなみにマラソンは、健康を保つという目的でやるのはあんまりよくないからね。いきすぎた有酸素運動はからだを老化させるだけだから。マラソンを好きで楽しみたいんならいいけど。健康を保つことと、それ自体を好きで楽しむことはわけて考えたほうがいい。そこは、ロジカルに。

久志 「自分にとって一番いい食べ物とか運動とか環境って何だろう?」って考えたほうがいい。みんな、一人ひとり違うんだから。

煽られない幸福論ーー自分らしい幸せのカギは「第二の脳」にあった

バイオハックは、ビジネスの大本命でもある

久志 実はバイオハックには、『TABI LABO』と同じくらいの思い入れがあって。「すごくやりたいことなんです」とかいうと、株主に怒られるけど(笑)

渡辺 そうなの? それは「ビジネス」として?

久志 はい。さっき「東洋的」という話もしましたけど、バイオハックって僕たちアジア人が取り組むことのアドバンテージが大きいと思うんですよね。禅や精進料理、自然療法、鍼灸、気功・・・ 科学的にはまだよくわからないけど、からだをハックする文化がたくさんありますよね。

渡辺 そうだね。バイオハックのマーケットはめちゃくちゃ大きいから。食だけじゃなくて、さっきのホルモン検査もそうだけど医療にもつながっているし、世界を変えることに対してインパクトが大きい。

久志 ビジネスにおいて最高の資本って人じゃないですか。だったら、人を変えるのが世界を変える上で一番インパクトが大きいと思うんですよね。

渡辺 バイオハックはからだだけじゃなくて、メンタルの健康にもつながるわけだし。

久志 今、世界の才能とかお金って経済的なグロースにばっかり注ぎ込まれてるじゃないですか。そうじゃなくて、バイオハックみたいに、もっと幸せそのものとか、人の幸福度をあげることに直接的に使われたほうがいいと思うんですよ。

渡辺 たしかに。「世界中の人の平均IQを10上げる食べ物の選び方」とか見つけたら、ビジネス書とかにありがちな「年収2000万になるための10の習慣」みたいなものより、ブレークスルーにつながるよね。

久志 ですよね。それに、バイオハックをビジネスとしてやるんだったら、いま始めるのが絶対おもしろい。さっき、これからテクノロジーが進化して、何でも測れるようになるって言いましたけど、デバイスをからだに埋め込むとか、バイオハックはもっともっと進化していく。その過程を最初から見られるわけタイミングなわけだから。

渡辺 それもそうだし、あとバイオハックは、健康とか寿命とかにかかわる究極の自分ゴトだから、それをやり続けることに何の疑問も感じない。

久志 やり続けることに何の疑問も感じないって、ビジネスにとって、経営者にとってすごく大事ですよね。ていうか、そんな仕事あったら最高ですよね。

渡辺 だね。それに、人間はバイオハックによって、もしかしたら自分の意志で進化する最初の生物になるかもしれないよ。

久志 ですね。

渡辺 バイオハックをビジネスとしてやるとしたら、どんなイメージ?

久志 まずは、東洋的な思想や文化をベースにした「バイオハックラボ」みたいな、バイオハックに興味がある人と情報が集まる場所ができるのがファーストステップ。そのうち世界中のラボがつながって、いろんな国のバイオハッカーたちが自分たちの経験をシェアするようになる。

渡辺 『Catalyst』は、いまそういう場所になりつつあるかも。『TABI LABO』のソーシャルの力をうまく使えば、それもできるんじゃない?

久志 そうですね。ただ、これはメディア論みたいな話になるかもしれないですけど、ウェブメディアをやっていて感じるのは、誰でもアクセスできる場所や情報の価値って、これからどんどん無くなっていくんじゃないかな。

渡辺 ウェブ上の記事とか?

久志 それも含めて。きっと、情報を見ただけでは行った気になれない、まったく意味がわからないような場所の価値が高まっていくと思うんですよ。

煽られない幸福論ーー自分らしい幸せのカギは「第二の脳」にあった

渡辺 例えば、どんな場所?

久志 そこを訪れた本人でさえも行き方がわからないとか、行ったことを誰も簡単に表現したり、シェアできない場所とか。

渡辺 ああ、そういう場所には価値があるだろうね。

久志 だから僕らは、情報を消費するだけではなくて、体験することではじめてちゃんと本質的な価値を感じることができるものを作っていかないといけないと思っています。バイオハックのコミュニティーを作るとしたら、そういうやり方でやりたいなと。

渡辺 いいね。バイオハックは、みんながそれぞれ自分の個体差をふまえた実践をしているわけだから、集まる人が持ち寄る情報も人それぞれなわけだし。

久志 『TABI LABO』は、「シェア」というコンテンツのディストリビューション革命に乗ったわけだけど、その先には単純な情報消費への揺り戻しが起こると思います。今は情報が本当に多すぎる。

渡辺 例えば、海外から変態バイオハッカーが来て話すんだけど、ただ情報を消費するんじゃなくて、そこにはバイオハックを実践している人しか入れないクローズドな場。しかも、そこではかならず一緒に実験をするとか。いいね。

久志 そうやって、情報を消費するんじゃなくて、体験を共有、共創するコミュニティーが広がれば、Eコマースとかわかりやすいビジネスはいくらでも後から作れると思うんですよ。自分のからだの個体差を踏まえて、摂るべき食材を提案してくれるサービスとか。

渡辺 女性ターゲットにして、美容にもアプローチできるだろうね。やっぱりマーケットは大きい。

久志 最初は意識の高い人から始まって、徐々に広がっていくんでしょうね。できれば、それを健太郎さんとやりたいんですよ(笑)

渡辺 いいね。バイオハックは、ビジネスの大本命なんで。

久志 健太郎さんだったら、バイオハックをどんなビジネスにしますか?

渡辺 僕だったら、人のからだの個体差に関するデータを集めて、それを踏まえてパーソナライズされた食べ物のレコメンド広告を配信するとか。そうすれば、たぶん企業は個人に対して効率的に食品を売ることができるようになるので、その分の浮いたコストを使って、消費者がバイオハックを実践するのにかかるコストも下がったりすると思うんだよね。

久志 ときには、サプリや食べ物がタダ(無料)になったり?

渡辺 そうそう。そうすれば、バイオハックを実践する人もますます増えるわけだし。一番やりたいのは、検査費用を無料にすること。そうすればデータが多く集まるので、より精度も上がるしマーケットが大きく変わるよね。

久志 なるほど。それはアドテクをやってきた健太郎さんならではだな。そうやって、テクノロジーが人の健康とか幸せとかバージョンアップに、よりダイレクトに貢献していける時代が来るんですね。

渡辺 そういう時代にしたいね。

Behind the sence 『TABI LABO』の制作現場

対談は、『TABI LABO』のオフィスである、代官山にある3階建の一軒家で行われた。

『TABI LABO』の制作現場『TABI LABO』の制作現場

『TABI LABO』の制作現場

『TABI LABO』の制作現場

『TABI LABO』が発行するフリーペーパー『ReTHINK』『TABI LABO』が発行するフリーペーパー『ReTHINK』

『TABI LABO』が発行するフリーペーパー『ReTHINK』

『TABI LABO』チームの皆さん。ご協力ありがとうございました。『TABI LABO』チームの皆さん、ご協力ありがとうございました。

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