Q

「VR・AR・AH × ヒト」でスポーツの再発明!超人スポーツ7競技を体験取材

2015年12月9日から11日まで、超人スポーツ協会の共同代表である中村伊知哉氏と稲見昌彦氏、『Catalyst』監修役を務める渡辺健太郎の対談を、3日連続でお届けした。対談では、テクノロジーを駆使することで拡張されるスポーツというものの未来像が語られた。

この濃密な対談に同席した筆者にとって、特に印象に残ったのは次の3点だった。一つは、身体の拡張により老若男女が平等にプレイヤーとして参加できる民主化されたスポーツの姿。もう一つは、既存のスポーツの拡張。そして、観戦に起こる変化だ。

この3つをいち早く自分の目で確かめるべく、デジタルコンテンツの祭典「デジタルコンテンツEXPO 2015」を取材し、そこで同協会が開発中の7つの新競技のプロトタイプを体験した。

身体の拡張

「EXTREME CRUTCH -mirairuma-」

EXTREME CRUTCH -mirairuma-

「身体の拡張」という目的で開発された「EXTREME CRUTCH -mirairuma-」。両腕に装着した松葉杖と片足だけで行う、近未来版「だるまさんがころんだ」である。

鬼役は、自動でカウントを行う「ミライルマ」というデジタルだるま。それが「ミライルマがころんだ」と言い終わる前にプレイヤーはミライルマに近づく。言い終わった瞬間、ミライルマが目を見開く。目が開いている間、プレイヤーは動いてはいけない。

目が開いている間に少しでも動くと、手に持っている松葉杖に付属している元々青色の装置が赤色に発色する。それが3回繰り返されるとゲームオーバー。近づく、止まる動作を繰り返し、ミライルマが置かれている台座にあるベルを松葉杖で鳴らしたプレイヤーが勝利だ。

実際にプレイしてみて、微細な動きを感知する松葉杖があることによって全身の感覚が研ぎ澄まされるのを感じた。まさに五感の拡張ともいうべき体験だった。

「Bubble Jumper 鬼相撲」

Bubble Jumper 鬼相撲

ジャンピングシューズのような脚部強化器具と、バブルボールのような衝撃吸収体を組み合わせた「Bubble Jumper(バブルジャンパー)」を装着して行う、拡張人間(Augumented Human)型の競技。1対1で戦い、相手を押し出したり、倒したりして競い合う。

実際に器具を装着してみたが、両方とも結構な重さがあり、動くだけでも一苦労だった。ひとによっては慣れるまでに時間がかかるが、バブルがあることで通常はできないようなアクロバットな動きに挑戦することができる。

ちなみに、バブルジャンパーにはハイジャンプをしてその高さを競うなど、個人競技としての楽しみ方も広がりつつある。

「Hover Crosse」

Hover Crosse

重心を移動させてコントロールする電動スクーター「Hovertrax」に乗り、両手に持ったスティックにそれぞれボールを1つずつ載せて、フィールドに3つあるゴールのどれかにボールを入れてその個数を競う競技。

2名の選手が攻守に分かれ、守備側は専用スティックで攻撃側が持つボールを落とす。それぞれが攻撃を行うと1セット、それを3回繰り返すとゲームが終了する。

モビリティーテクノロジーを駆使して人機一体のプレイを楽しむ、新しいモータースポーツとしての可能性を感じた。

既存のスポーツの拡張

「Augmented Dodgeball」

Augmented Dodgeball

小学生の頃に誰もが楽しんだあのドッジボールを、ビデオゲーム的な要素を入れることで拡張した団体競技。

従来のドッジボールと大きく異なる点は、攻撃力、防御力、体力の3つのパラメーターをプレイヤーに導入している点。特殊なボールとヘルメットによってそれぞれの力が判定され、画面に映し出されている体力ゲージが0になったら、外野行きだ。

個人の身体能力に依存しない仕組みにすることで、ドッジボールを誰でも楽しめるものにしていた。また、応援するひとが攻撃を判定したりプレイヤーの体力を回復させられる点は、対談で言及された「未来の観戦」に通ずるものがあると感じた。

「360°VRキックボクシングエクササイズ」

360°VRキックボクシングエクササイズ

VR(バーチャルリアリティー)技術を駆使した、キックボクシングエクササイズゲーム。PCとヘッドマウントディスプレイ(Oculus)、Kinectを使って行う。

その特徴は、360°パノラマビューが可能なヘッドマウントディスプレイを装着することで、銀座の歩行者天国、増上寺、ギリシャなどさまざまな場所でプレイできること。いまは一回につき1分間のコンテンツが用意されているが、今後3分間のものも開発予定。

1分間という短い時間にも関わらず相当な運動量になる。VR技術によって場所を問わずどこでもプレイができるため、マイクロスポーツ的な要素も含んでいる。バーチャル空間でほかのひとと競えるようになれば、それはまた新しい競技の創造につながりそうだ。

VRが実現する「未来の快感」と現実世界へのフィードバック

「HADO」

HADO

ウェアラブルデバイスとAR(オーギュメンティッドリアリティー)技術を使った団体戦のテクノスポーツゲーム。手を動かして「かめはめ波」のような攻撃魔法や防御するための魔法の壁を出現させるなどして戦う。

HADOでは、筋肉の動きをセンシングする腕輪型のウェアラブルデバイスと拡張現実を映し出すためのスマートフォンをはめたヘッドマウントディスプレイを用いる。腕を胸元に寄せると「気」をためることができ、それを前に突き出すことで技を「放出」する。そのエフェクトがヘッドマウントディスプレイに表示され、自分があたかも魔法を使っているかのような感覚を味わえる。

実際に、4人家族が一緒にプレイをして子どもが親たちに勝つ場面があったが、身体能力に差がある大人と子どもが同じように熱中して楽しめるのは印象的だった。スポーツに参加する障壁をテクノロジーの力で低くしているのは、まさにスポーツの民主化の一端と言える。

観戦の拡張

「自由視点映像スタジアム」

自由視点映像スタジアム

「試合観戦」を拡張するシステム。従来の固定カメラとは異なる、フィールド上のプレイヤーなど自分が望む位置から観戦することができる。

カメラ位置とカメラの注視点を操作できるマーカーを使う。ビルボードには選手とフィールドがCGで映し出され、その上でマーカーを動かすことでもうひとつのディスプレイに自分が動かした方向の映像が映し出されるという仕組み。スポーツバーなどでの活用が期待される。

すでにサッカーの試合の映像をビルボードに送信して楽しむ実用化がなされているそう。画質がより一層向上されれば、新しい観戦の仕方を提案するものになるだろう。

取材を終えて

「身体の拡張」「既存のスポーツの拡張」「観戦の拡張」という3つの観点で、さまざまな競技を取材した。特に印象的だったのは、対談にも多く登場した「Bubble Jumper」。

胴体がバブルに包まれ安全性が担保されることでアクロバットな動きに挑戦する敷居が下がったが、これこそがまさに対談で語られていた、誰もが競技に参加することができる「スポーツの民主化」に近いものだと感じた。

いずれの競技もまだプロトタイプの段階ではあるものの、用いられているテクノロジーの汎用性は高く、今後ますますあらゆる「拡張」においてその本領を発揮すると思われる。空想の世界だけでしか起こらないと思っていたことが、開発者の手によって実現されようとしている。壮大なビジョンに向けて超人スポーツがどのように発展していくか、これからも追い続けたいと思う。

価値観を変えるシゲキメディア

TAGS

SHARE

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで『Catalyst』をフォローしよう!