齊藤元章が語るスパコンがコピー機サイズになる日〜新卒を雇うかスパコンを導入するか

2017.1.19

スパコンがコピー機サイズになる日はもうすぐ。Pezy Computingの代表取締役の齊藤元章氏が語る、スパコンが普及した未来で起こることとは。

コピー機サイズのスパコン

スーパーコンピューター(スパコン)がオフィスのコピー機サイズになる。これは遠い未来の話ではない。

「日本が誇る理化学研究所のスパコン『京』と同等、または上回る性能を個人レベルで使えるようになる時代がもうすぐ実現する。」

こう語るのは少数精鋭のスパコン開発ベンチャー企業PEZY Computingの創業者兼代表取締役社長の齊藤元章氏だ。
スパコンがコピー機サイズになるとき、いったいどのようなことが起こるのか。

10月19日に虎ノ門ヒルズで開催されたWIRED CONFERENCE 2016「FUTURE DAYS」で、「スパコンがコピー機サイズになる日」と題して齊藤氏が語った近未来の話をお伝えする。

新卒を雇うか、スパコン1台導入か

2018年に京に匹敵する8ペタフロップスのスパコンがコピー機サイズ(1立方メートル)になるというのが齊藤氏の見通しだ。
※フロップス:1秒間に浮動小数点演算を何回できるかというコンピューターの処理能力単位。1テラフロップス=1兆回(10の12乗)、1ペタフロップス=1000兆回、10ペタフロップス=1京回
これはPEZY Computing社が開発するスパコン「ZettaScaler」の性能向上予想に基づいたもの。

2016年11月時点の最新型は「ZettaScaler 1.8」で、理化学研究所に導入されている。約1立方メートルのサイズで、演算性能1ペタフロップスと現時点で世界初の性能密度を持つスパコンだ。

2017年春には「ZettaScaler 2.0 」をリリース予定で、同サイズで処理性能が1.5ペタフロップスになるという。

さらに翌年2018年には処理性能8ペタフロップスの「ZettaScaler 3.0 」をリリースする計画だ。つまり、京(現時点の処理性能10.5ペタフロップス)に迫る性能を持つスパコンがコピー機サイズになるには、あと2年ほどで実現してしまうということになる。

そして、2020年に20ペタフロップスの「ZettaScaler 4.0 」が登場する。

ちなみに現在の京は864台のコンピューターで構成されるもので、冷却部分など含めるとビル8階分のスペースを必要とする非常に大きなシステムだ。1日の電気代も600万〜700万円と到底個人レベルでは使えるものでない。

齊藤氏によると「ZettaScaler 3.0」までいくと電気代は京の40分の1になり、1日稼働させると約15万円で、年間200日稼働させると3000万円だが、夜間に限定して使用することで、年間400万円以下にすることもできるという。

この400万という数字は新卒を1人雇うコストに近しい。

つまり、新卒を雇う費用とスパコンの運用費用がほとんど同じになるということだ。

「新卒を雇う代わりに10ペタフロップスのスパコンを導入することが企業の選択肢になり得る時代が数年でやってくるかもしれない。」

コピー機と同様に、大企業であれば何百・何千台とスパコンを導入でき、中小企業や大学、などでも導入できるようになり、個人レベルでの使用も実現すると齊藤氏は考えている。

スパコンがコピー機のように普及した世界で起こること

「これだけスパコンが普及すると想像したとき、プレシンギュラリティが起こってないというのはどう考えてもあり得ない。」

コピー機と同じようにスパコンが普及した世界で、どのようなことが起こるのだろうか。

齊藤氏は、次世代スパコンの数や能力が国力になる可能性、そして人工知能と組み合わさることで「最強の科学技術基盤」が生み出させる可能性があると主張する。

人工知能が進化すると、仮説の立案をするようになる。
そしてその仮説をスパコンのバーチャル空間で検証できるサイクルが確立すると、人間が考えもつかなかったような法則が続々と発見されるかもしれないというのだ。

生命科学の分野であれば、既存薬の改善や新しい病気や病態の発見が進み、最終的に「病気」という概念が再定義されるようになり、生殖、成長、老化、進化といった生命の神秘が解明されるという。

「医療、生命科学が再構築されることに加えて、最終的には生命体のリデザインを行えるようになるでしょう。ここまでいくと、寿命のあるなしは関係なくなっていきます。」

つまり、人間は老いを知らない「不老」の状態になるというのだ。

このように私たちの常識や価値観を覆す発見が進むのは医療分野だけなく、エネルギーや衣食住などありとあらゆる分野に及び、プレシンギュラリティが実現されると私たちは「不老」と「不労」の2つを手にするというのが齊藤氏が見る未来だ。

そしてその先、スパコンにおいては2025年に100エクサフロップス、2028年には1000エクサフロップスとエクスポネンシャルな進化を遂げる見込みだ。このままいくと2029年頃にシンギュラリティに到達する可能性も大いにあるという。

プレシンギュラリティ、そしてシンギュラリティへ。齊藤氏率いるPEZY Computing社の躍進に注目したい。

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