【深セン】慶応女子が行く「中国のシリコンバレー」の最新ドローン事情#02

2017.1.19

アジアで最も勢いがあり「中国のシリコンバレー」と呼ばれるドローン都市「深セン」。
その深センの「ドローンの今」を調査すべく現地に赴いた慶應義塾大学SFCの遠藤澄絵さん。ネイティブ並の中国語を操る彼女が、地元に溶け込み実施した潜入レポ。
前編ではドローン新作発表会にて、4時間30分以上と脅威の連続飛行が可能な水素燃料ドローンを目撃。さらに世界的に人気のドローンレースパーツを製造する企業を訪問した。

ビルをまるごとドローンレース場に 深センの豪快企業「D1」

次に訪問するのは、ドバイのドローンレース世界大会で予選2位通過と実力を見せつけた深センチームのスポンサー企業「D1」だ。

2016年6月25日に深センで開催されたドローンレース国際大会「アジアカップ」の主催企業でもある。
そのD1でドローンレース関連事業を担当するシェービンさん、そしてルイスさんに案内されたのが「天空競技場」と名付けられた建物だ。

Image title深センのドローン関連事業を運営する「D1」が所有するビル

Image title「天空競技場」と呼ばれるこのビル オフィスではないようだ

外見はオフィスビルのようだが、中はコンクリートがむき出しで普通のオフィスに見られる受付やデスクなどは見当たらない。
「何にもないですね、、、」と戸惑う遠藤さん。
するとシェービンさんが「ここはD1チームのドローンレース練習場なんですよ」と説明してくれた。

Image titleD1のドローンレース事業担当者シェービンさん

Image titleD1のドローンレース事業担当者ルイスさん

なんと、3階建てのビル一棟を買い取り、そのうちの1階と2階をドローンレース練習場に改造した建物だという。

Image title建物の中に事務作業用デスクはないが、ドローン修理用デスクはある

Image title建物全体がドローンレース場になっている

たしかにビニールシートで仕切られている先にLEDで照らし出されたコースが見えている。

Image titleここでドローンが高速飛行する

ここで登場したのが、D1チームのトップパイロット、深セン出身若干17歳のシャオリーさんだ。

Image titleシャオリーさん(写真右)若干17歳で中国トップクラスのパイロットだ

ドバイのドローンレース世界大会の本戦ではマシントラブルで実力が発揮できなかったが、難コースだった予選で2位通過と、優勝した英国15歳パイロット Lukeさんに引けをとらない実力を持つ。
そのシャオリーさんがデモンストレーションで室内コースを飛ばして見せてくれた。

Image title難コースでもビュンビュン飛ばす

狭い上にアップダウンが激しく、かなり難しいコースだが、すごいスピードでクリアしていく。ドローンは何度かクラッシュしたが、何事もなかったかのように再開する。

確かに、この難コースでトレーニングを積めば世界レベルの実力を養うことが可能だ。室内なので、天候に左右されることもなく、夜間でも練習ができる。

Image title墜落すると自分で取りに行くシャオリーさん

「今後、このような室内練習コースを別の建物でも作る予定」とシェービンさん。

ビルをまるごとドローンレース練習場にしてしまうという発想は日本ではあり得ないが、深センではそれが可能ということだ。D1の豪快さは、アジアカップでも発揮されるに違いない。

アジアカップの詳細は後日お伝えする予定だ。実力から見て中国代表の一人はシャオリーさんとなるだろう。

深セン・ドローンメーカーの企画会議に参加?

D1の天空競技場を後にした遠藤さんが向かったのは、深センのドローンメーカー「MakerFire」だ。

まだそれほど知られたブランドではないが精力的に新作ドローンを作っている勢いのあるメーカーだ。さきほど登場したD1同様、深センのドローンレースチームのスポンサーでもある。

案内されたのは深セン市内の工場地帯。薄暗い廊下を抜け、コンテナ用エレベーターで上がった先にオフィスがある。

Image title深センのドローンメーカー「MakerFire」へ

社長のヤンさんはアイデアが思い浮かぶとそれをすぐに商品化するスピード感でさまざまなドローンを作っている。

Image titleMakerFireオフィス内には、さまざまなドローンが飾られている

訪問した遠藤さんにヤン社長は今開発中の新作ドローンをお披露目してくれた。
今中国で熱いマーケットはレースドローン。その市場を取りに行くべく、初心者向けのレースドローン自作キットを商品化しようとしているという。

Image titleヤン社長が見せてくれたレースドローン自作キット

「このドローンセットを商品化しようと考えているのですが、何か改善点はありますか?」とヤン社長のいきなりの質問をきっかけに、取材は商品企画会議に。予想もしてなかった展開になってしまった。

同行してもらったD1のルイスさんらも巻き込み、中国語で企画会議は白熱。
「フレームはもう少し小さい方がよい」「ハンダ付けのカ所を工夫したほうがよい」などさまざま意見が飛び交った。

「デザインがいまいちで、もう少しかっこよくしたいですね。あと、女性をターゲットにするなら、色も変えないと」と遠藤さんも率直な意見をヤン社長に提案。

Image titleヤン社長にアイデアを提案する遠藤さん

「なるほど。たしかに、女性向けのデザインや色は重要ですね」とヤン社長も納得した様子。

Image titleさまざまなアイデアが出てヤン社長もうれしそうだ(写真中央)

このヤン社長、外の技術やアイデアを積極に学ぶという深センのオープンな文化を象徴しているように見える。

海外で生まれ育った中国人が、中国で最も住みやすい街の一つというだけあって、海外の文化や技術を積極的に取り入れるオープンな文化があるのが深センだ。深センをビジネス拠点に選ぶ欧米企業も多く、それに伴い移住してきた欧米人も少ない。

欧米だけでなく、アジアや他の地域からも多くの優秀な人材を惹きつけている。

Image title多様性溢れる街「深セン」

イノベーションを起こす必要条件である「多様性」が深センにはあるのだ。その多様性を生かして一気にドローン世界市場でリーダーとなったのがDJIと言える。

Image titleイノベーションを起こし続けるDJI

イノベーションハブ構築に本気で取り組む深セン

深センが「中国のシリコンバレー」と呼ばれている理由の一つが、経済特区「Qianhai Shenzhen-Hong Kong Modern Service Industry Cooperation Zone」の存在だろう。中国語では「前海深港现代服务业合作区」だ。

Image title深セン宝安国際空港 前海経済特区からも近い

この前海経済特区は、広東省自由貿易特区を構成する4つの地区のうちの一つ。

広東省自由貿易特区は、省内の広州市南沙新区、珠海市横琴新区、深セン市前海経済特区、そして深セン市蛇口工地区の4地区で構成されている。

前海経済特区は2020年の完成を目指したプロジェクト。
すでに完成したオフィスには、香港や海外から多くの新興企業が拠点を構えている。
法人税が優遇されるだけでなく、資金調達がしやすく、政府支援を受けられる環境が整っており、新興企業が集まるインセンティブが用意されている。

Image title前海経済特区内にあるスタートアップ企業のオフィス スタイリッシュなオフィスだ

すでに2万5000社以上が同特区に法人登録している。
このうち50%以上が金融サービス系企業だが、テクノロジー系企業も約20%と少なくない。もちろんテクノロジー系企業の中には、ドローン関連企業も含まれる。

こうした環境は、世界中の優秀人材を呼び寄せる魅力となっている。実際、深センには若いひとが多く、街全体で感じられる「活気」の源になっている。今回訪れた企業でも多くの若いひとが活躍している姿を目にした。

Image title前海経済特区内にあるスタートアップ企業オフィス内 ガジェットで溢れ楽しそうだ

日本の外に出てみたいと考えているCATALYST読者に、特にオススメする街だ。

ビジネスを立ち上げる環境が整い、巨大市場が目の前に広がっている。アイデアと地元文化に溶け込む適応力があれば、エキサイティングな日々を送れるはずだ。
遠藤さんも「街に活気が溢れていて、楽しいです。将来、深センで働くのも悪くないですね」と深センが気に入った様子。

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慶應女子の潜入レポ 「中国のシリコンバレー」深センの最新ドローン事情 後編

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