【深セン】慶応女子が行く「中国のシリコンバレー」の最新ドローン事情#01

2017.1.19

アジアで最も勢いのある都市をご存知だろうか。「中国のシリコンバレー」と呼ばれている広東省のハイテク都市・深センだ。
今回は慶應女子が「中国のシリコンバレー」深センに潜入し、ドローン事情をレポート。4時間以上飛行する脅威のドローンなどを目撃した。

中国のシリコンバレー 深センとは?

Image title高層ビルが並ぶ深セン

米系シンクタンク、ミルケン・インスティチュートが、雇用、収入などの経済指標を基にアジア24都市を比較したランキング「Best-Performing Cities Asia 2014」では深センが北京やシンガポールを抑え1位を獲得した。

世界の製造業の中心として知られていた深セン市だが、最近ではロボティクスやIT系のスタートアップのハブとして地位を確保する取り組みを加速。中国を代表する通信機器メーカー華為技術(Huawei)や高品質スマホのスタートアップOnePlusなどが拠点を置き、優秀な人材が世界中から集まっており、街の様相もこの数年で激変しているという。

Image title週末ににぎわう深センの繁華街 きれいな街で東京にいるかのように錯覚してしまう

深センで今最も熱い分野はドローンだ。世界に出回っているドローンのほとんどが深センで製造されている。ドローンの世界市場の70%を占めると言われているDJIも深センに拠点を置いている。

世界のどこに行っても「ドローンといえば深セン」と言われるほど、ドローン都市として認知されているのだ。

そんな深センの「ドローンの今」を調査すべく現地に降り立ったのが慶應義塾大学SFCの遠藤澄絵さんだ。

遠藤さんは10代半ばまで上海で過ごしたこともありネイティブ並の中国語を操るほか、英語でのコミュニケーションもできるトリリンガル。
また大学のドローンレースチームの広報を務め、ドバイのドローンレース世界大会に参加するなど、ドローンの知識・ネットワークも豊富だ。

今回、現地ネットワーク、ドローンの知識、現地語でのコミュニケーションが必要で、これらの必要条件を満たしている彼女に深セン潜入レポの白羽の矢が立ったのだ。

Image titleネイティブ並の中国語を操る慶應義塾大学の遠藤澄絵さん

他の日本のメディアでは決して足を踏み入れることができない場所に潜入し、深センのドローン事情を裏側から調査することができた。

脅威の飛行時間 水素燃料で飛ぶドローンを目撃

深センに降り立った遠藤さんがまず向かったのは、深セン市内某所で開催されるという新作ドローンの発表会だ。
政府要人も参加すると噂されていた重要発表会という。

向かった先はとある高級ホテルの大型コンフェレンスルーム。

発表会は日曜日にもかかわらず、革新的技術が搭載されたドローンが発表されるということもあり立ち見が出るほどの大盛況だ。

Image titleMMC社の新作ドローンの発表会

Image title日曜日にもかかわらず多くのひとが参加

ステージに登場したのは深センのドローンメーカーMMC社の担当者と赤い布で覆われたドローンだ。

Image titleベールに包まれた新作ドローン

会場にいる参加者の視線がドローンに注がれる中、おもむろに布が取れると、朱色の大型ドローンが姿を現した。直径1.5メートルほどと、DJI社の大型ドローンS1000よりも大きな印象だ。

Image titleついに姿を現す新型ドローン

さてこのドローンのどこが革新的なのか。プレゼンがその核心部分に。
なんと、水素燃料で4時間以上も連続飛行が可能という。

Image title水素燃料で4時間以上飛行できる新作ドローン

Image title証拠動画で4時間以上飛行できるところを披露

これまでリチウムポリマーなどの蓄電池が主流で、ドローンの飛行時間はせいぜい数十分。
水素燃料を動力とするドローンは各国で開発が進んでいるようだが、MMC社がその中で抜きん出たことになる。

連続飛行時間が伸びたことで、ドローンに任せることのできるタスクはインフラ設備の点検などかなり増えることになりそうだ。

例えば、サーモグラフィーを搭載し、石油パイプライン点検や鉄塔の点検などにドローンを使えるようになるという。

Image titleドローンにサーモグラフィーカメラを搭載し、電気インフラ点検に応用することも

深センではこのようなドローンの新作発表会はかなり頻繁に開催されているという。
地元メディアもドローンの重要性を認識しており、取材記事も多く、市民の認知向上につながっているように見える。

ドローン新作発表会を終え「日本に比べると、深センの方がドローンへの関心が高いのが感じられますね」と遠藤さん。
確かに、政府要人や参加者の熱気を見ると深センでは、ドローンを一つの産業として育てていこうとする強い意思を感じることができる。

Image title前列に座る政府関係者も真剣な眼差しだ

ちなみに、深センで製造されるドローンの99%が輸出向け。関税統計によると、深センで製造された消費者向けドローンの輸出額は2015年に前年比7倍伸び、30億9000万元(4億7200万ドル)に達した。主な輸出先は、香港、北米、欧州という。

世界で人気のレースドローンパーツも深セン製

遠藤さんが次に訪れたのが、レースドローン向けの人気パーツを作る企業だ。日本でも少しずつ人気が高まっているドローンレースだが、海外ではすでにスポーツとして広く認知・普及が進んでいる。

世界に出回っているレースドローンのパーツも、ほとんどが深センで作られている。
今回訪れたのは、レースドローン用の人気プロペラ「DALPROP」、そしてレース用FPVカメラ「Foxeer」を製造する企業XAT VIDEO TECHNOGYだ。

Image title深セン市内にある工場地帯

Image titleXAT VIDEO TECHNOGY

ドローンレースにおいてプロペラの品質はパフォーマンスに直結する非常に重要な要素だ。プロペラが折れやすいと、ちょっとしたクラッシュで飛行不能になってしまい、レースで結果が残せないからだ。

DALPROPは「折れないプロペラ」との謳い文句通り、どれだけクラッシュしても折れることがなく、ドローンレーサーに重宝されているプロペラだ。
ドローンレースをたしなむ同社社長の張さんが練習でのクラッシュの度にプロペラが折れて困ったという経験から、自分で折れないプロペラを作ろうと思ったのが発端だ。

Image titleXAT VIDEO TECHNOGY社長の張さん

ドバイで2016年3月に開催された賞金総額100万ドルのドローンレース世界大会でも、DALPROPを利用している出場者は多く、人気の高さが伺えた。

そんな張さんから最近ドローンレーサーとなった遠藤さんにDALPROPが提供された。「クラッシュしても折れないプロペラだから、たくさん練習できますね(笑)」と張さん。

Image title深セン市内で開催されたドローンレースでもDALPROPが多かった

深セン市は、製造工場が多く、何か作りたいと思ったら、すぐに作れる環境がある。

しかも、かなり良い品質のものを安く作れるのだ。優秀なハードウェアエンジニアが多く集まる深センならではのものだろう。
DJIの創設者フランク・ウォン氏が、香港ではなく深センを拠点に選んだ理由でもあるのだ。

Image title深セン市内にあるDJIのフラッグシップストア 本社ビルはここから少し離れたところにある

このように深センは世界中のアイデアを持った起業家たちを惹きつける魅力がある。「実際に足を運んで自分の目で見ることで深センが『アジアで勢いのある都市』と呼ばれるのも納得できますね」と遠藤さん。
また、10代半ばまで上海で過ごした経験から「深センは10年前の上海に似ていますね。これから成長する熱気を感じます」と語った。

シンガポールに住む筆者も深センに初めて来て、シンガポールのようにテクノロジーにオープンで、クアラルンプールやホーチミンなどの東南アジア新興都市のような熱気があると感じた。
後編では、ドローンメーカー、そしてドローンレース主催会社を訪問。深センがドローン都市として急成長している背景にあるものがかいま見えた取材となった。

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慶應女子の潜入レポ 「中国のシリコンバレー」深センの最新ドローン事情 前編

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