【ミャンマー】ドローン持込禁止のミャンマーで注目を集める学生ドロニスト

2017.1.20

2015年11月9日の夜、アウンサンスーチー党首率いるNLD(国民民主連盟)本部前は、選挙速報で優勢を知った市民で埋め尽くされた。人びとは手に手に赤い党旗や風船を掲げ、党のイメージソングを大合唱。ドローンが上空に飛来すると、歓声をあげながら手を振った。
しかし、このドローン、実はミャンマー国内にはあるはずのないものだ。いまだ、原則的には国内への持ち込みが許されていないからだ。

ドローン持ち込み禁止なミャンマーで見る絶景

集まったNLD支持者の上空を浮遊するドローン集まったNLD支持者の上空を浮遊するドローン

海外の旅行サイトやブログでは、「ミャンマー税関のサイトでは持ち込み制限リストに入ってるけど本当にダメなの?」、「税関でX線検査を受けたけど見つからなかった」、といったドローンに関する質問や体験談が飛び交っている。

赤茶けた平原に朽ちかけたパゴダが点在するバガン遺跡などは、ドローン愛好家ならぜひとも撮影したい光景だろう。

持ち込みを制限されているドローンだが、実質的には国内ですでに出回っている。密輸品が主流だが、ヤンゴン市内だけでドローンを扱うショップは5軒あり、すでに数百台を販売したという。もちろん、こうした店は表立っては営業しておらず、警察に摘発される恐れもある。

そんな中、ドローンで撮影した映像を次々とFacebookにあげ、話題になっている男性がいる。ヤンゴン市内の法学部学生、ネイラーさんだ。彼は学業のかたわら、映像専門学校で技術を磨き、結婚式のビデオなどを撮影する会社ネイラープロダクションも立ち上げている。

ネイラーさんのFacebookページネイラーさんのFacebookページ

「去年、海外のドローンメーカーがヤンゴンでプロモーションを行った際、ひと目で夢中になってしまって。この3月にタイで購入したんですが、予算の都合で、バッテリーが2つ付いて200万チャット(約19万円)の安いモデルにしました」

資金源は学生らしく、頑張って貯めた小遣い。Facebookへアップする写真の撮影費用も、当初は小遣いからひねり出さねばならなかった。撮影場所へのタクシー代やバッテリー代もばかにならない。そこへ助け舟を出したのが、芸能関係の仕事をしていた親戚だった。歌手のプロモーションビデオ撮影にドローンを使ってくれ、それをきっかけに仕事が舞い込み始めた。

こうして得た利益をさらに撮影につぎ込み、Facebookへアップ。彼のぺージは若者を中心に人気をよび、メディアでも取り上げられるようになった。現在は学業の合間に、月10本程度の仕事を請けているそうだ。

ネイラーさんが撮影したヤンゴンの夜景

ネイラーさんが撮影したヤンゴンの夜景ネイラーさんが撮影したヤンゴンの夜景

若者ならではFacebook利用が人気の秘密

彼以外にも、ドローン撮影に従事する制作会社はいくつかあるが、なぜ彼だけがこれほど注目を集めるのだろうか。ネイラーさんは、Facebookの力が大きいと分析する。

「私以外のドローン愛好家の多くが年配で、Facebookをあまり利用していません。私はドローンを始める前からすでに、Facebookで繋がる友達が多かったのが大きいですね。それにあくまで最初は趣味だったので、自分で撮った写真をどんどんアップしてましたから、目立ったんだと思います」。

料金の安さもある。大手がたとえば1時間40万チャット(約3万8200円)のところ、彼は朝9時から15時まで飛ばしても30万チャット(約2万8700円)。これは、彼がある意味で「プロフェッショナル」ではないからだろう。

弁護士と映画監督のどちらを目指すか迷っている、というネイラーさん弁護士と映画監督のどちらを目指すか迷っている、というネイラーさん

しかし、ドローンはそもそも輸入禁止のはず。これだけ注目を集め、何らかの法的処置をとられてしまう心配はないのだろうか。彼の答えはあっけらかんとしたものだった。

「警察には2回呼び出されましたよ。最初は警察署のすぐ上を飛ばしてたときで、『人に当たると危ないから気をつけなさい』って。2度目は、撮影エリアの下に住む人から騒音に関する苦情を受けて。このときは、『あまり低いところを飛ばさないように』と言われました」。

あくまで飛ばし方への注意だったようだ。ネイラーさんによると、すでに愛好者も一定数おり、政府もドローン利用に積極的だが、ルール作りが間に合ってない状況なのだという。

「実は、政府関係の仕事も何度か受けたことがあります。その時に教えてくれたのですが、現在、民間航空局や情報省、商務省の3省庁で、ドローン使用に関する登録や規制、持ち込みのルールなどを協議しているそうです。簡単にドローンを買えるようになれば、法外な撮影料をとる会社も減るはず。ドローン映像をよりたくさんの人たちが楽しめるようになるのを楽しみにしています」。

ほんの数年前まで、政府機関の建物の撮影や要人暗殺へのラジコン使用を警戒し、そういった機器へは神経を尖らせていたミャンマー政府。ある意味この「ゆるい」対応は時代の流れなのか、民主化が進んだ必然なのか。NLD本部上空に浮かぶドローンは、今日も歓喜に湧く群集を映していた。

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