ハリウッドが欲しがるアジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏。アジアトップクラスのドローン操縦技術を持つケニー・チュア氏のパーソナリティーに迫る。

【シンガポール】アジアトップクラス ドローン空撮パイロット ケニー・チュア氏

2017.1.20

元カーレーサーのドローン操縦技術はアジアトップクラス

空撮といえばこれまでヘリコプターが必須だったが、ドローンの普及で空撮業界も大きく変化している。

ドローンによる空撮の可能性を見出し、5年も前(2010年)にカーレーサー兼自動車エンジニアという職業から転身し、ドローン空撮を始めたパイオニアがシンガポールにいる。空撮専門会社K.Kopterの創設者でアジアトップクラスのドローン操縦技術を持つケニー・チュア(Kenny Chua)氏だ。

アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏

チュア氏は、アジアトップクラスといわれるドローン空撮技術をどのように習得したのか。それは、小学生のころにさかのぼるという。「小学生のころにラジコンに熱中するようになりました。ラジコンカーだけでなく、ヘリコプターなども操縦していたので、そのときからドローン操縦の基礎のようなものを自然と習得していたのでしょう」(チュア氏)。10代のころは、ラジコンの大会に出場して何度も優勝し、地元では知る人ぞ知る存在になっていた。

その後、マシン好きが高じて2000年にカーレース・ワークショップビジネスをシンガポールとマレーシアで開始した。経営だけでなく、自らカーレースのコーチとしてサービスを提供していたという。一方で、ラジコンは趣味として継続しており、操縦技術に磨きをかけ続けていた。

Youtubeの自作空撮映像から、ハリウッド映画の空撮を担当するまで

2010年、ドローンビジネスを始めるきっかけとなる出来事が起こった。

趣味で自作したドローンで撮影した映像をYoutubeにアップしたところ、その映像がシンガポールの映画監督ジャック・ネオ氏の目に止まり、空撮の依頼を受けたのである。このことがきっかけとなり、チュア氏はそれまでの仕事を辞め、ドローン空撮ビジネスを開始した。

その後、2012年にもネオ氏担当の映画『We Not Naughty』や『Ah Boys To Men』で空撮を行うことになった。また、ネオ氏がチュア氏を香港の映画監督ベニー・チャン氏に紹介したことから、香港映画『The White Storm』の空撮も担当することになった。

映画ではヘリが飛んでいるシーンをドローンで撮影する場合があるが、ヘリによる乱気流がドローンによる空撮を困難にする。しかしチュア氏は、レースで培った度胸、そして小学生のころから磨きをかけ続けてきたラジコン操縦技術で、しっかりと空撮をやってのけるのである。これが、映画監督や映像ディレクターたちがチュア氏のドローン空撮技術を「アジアトップクラス」と呼ぶ理由なのである。

こうした実績と経験が買われ2014年には、Hitmanシリーズの映画化作品「Hitman: Agent 47」でシンガポールでの空撮担当に抜擢されたのである。

この映画は日本で2015年8月21日に公開されているので、すでに見たというひとは多いのではないだろうか。「この映画の撮影の際は、大勢のスタッフがいたため、普段以上に緊張した」(チュア氏)というように、ハリウッド映画の撮影はいつも以上に大変だったようだ。

シンガポールで2015年6月からドローン規制が施行されたが、規制について人気テレビ番組でコメントを求められるなど「シンガポールでドローン空撮といえばこのひと」という地位を確立したといえる。

チュア氏が使用している自作ドローンを拝見

アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏
自作ドローン(6K映像の撮影ができるRED Dragon カメラ を載せて飛行が可能な大型モデル)

アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏
上記の大型ドローンに搭載されたRED Dragon Epic

チュア氏は、クライアントの要望によっていくつかのドローンを使い分けている。

普段は地元テレビ局の仕事が多く、その際は中型ドローンに一眼レフカメラなどを搭載して空撮を行っている。

一方で、最近ではハリウッドなど映画の空撮依頼も多くなってきている。映画では、通常専用カメラが使用される。REDやBlackMagicなどが有名だろう。こうしたカメラはレンズを含めると10kg近くになるものも多く、ペイロードの大きな大型ドローンが必要だ。チュア氏は2012年の映画撮影時から自作大型ドローンを使用している。

上記写真の大型ドローンはRED Dragonという10kg近くある大型カメラを載せて飛行が可能だ。アジア太平洋地域内でも、このクラスのカメラを載せて空撮できるのは、チュア氏を含め数えるほどしかいないだろう。
アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏
大型ドローンのテストフライトの様子

またPhantom2とGoProの組み合わせ、Phantom3プロフェッショナル、Inspire1をカスタマイズして使用している。より本格的な撮影の場合は、自作ドローンにPanasonicGH4やSony アルファシリーズのカメラを搭載して、空撮することも少なくない。

ドローン空撮、カメラの小型化、ドローンの小型化で、今までにない空撮が可能に

チュア氏はドローン空撮の将来を「高性能カメラの小型化に加え、ドローンも小型化していき、これまで撮影が難しかった場所で、ハイクオリティな映像の撮影が可能になる」と説明する。

例えば、プロフェッショナル向けのカメラを開発してきたBlack Magic社も、ドローンに搭載できるほどの小型カメラの開発に力を入れている。また、Sonyがこのほどローンチした4K動画対応カメラ「アルファ7rⅡ」や高感度カメラ「アルファ7s」などもその例といっていいだろう。チュア氏自身、ソニーのアルファ7シリーズがお気に入りだ。

「暗い場所で静止画を撮影する場合、地上であれば三脚を使いシャッタースピードを遅くすれば問題なく撮影できるが、ドローンでの空撮ではそうはいかないですね。シャッタースピードを遅くすると、ドローンの震動で必ずブレてしまいます。一方で、通常のカメラでISOを高く設定すると、ノイズがひどく、最終アウトプットとしてクライアントに出せるものではなくってしまいます。高いISOでも、しっかり少ないノイズで撮影できるアルファ7sは大変重宝しています」

いつか日本で空撮の仕事をしてみたい

チュア氏は、社員やその家族など20人の大所帯で、北海道や東京などへ旅行するほど日本が大好きだ。好物は一蘭のラーメンや油そばというラーメン好き。

チュア氏はいつか日本でドローン空撮をしてみたいと思っているという。「日本には四季折々の美しい景色がある。シンガポールは常夏なので、四季があるのはうらやましい限り。できれば、日本中を周り、美しい景色をドローンで撮影してみたい」(チュア氏)。

週末の楽しみはドローンレース

日頃から空撮でドローンを飛ばしているチュア氏だが、週末にもドローンでレースをするなどドローン三昧の生活を送っている。

レースは通常、金曜日夜と土曜日夜、人のいないビルや駐車場で行われる。時間帯は、安全を考え周囲にひとがいなくなる夜中になることが多い。
レースで使用されるのは、レース用小型ドローン。とてもパワフルで、操縦が非常に難しい。あえて例えると、DJI社のPhantomが一般的なセダンだとすると、レース用ドローンはF1車といったところだろう。

しかし、小学生のころからラジコンに親しみ、カーレーサーのバックグラウンドを持つチュア氏が操縦すると、難しさを感じさせない飛行を見せる。筆者も何度かチュア氏とドローンレースをしたことがある。他の参加者が必ずといっていいほどクラッシュをする中で、チュア氏がクラッシュしているところを見たことがない。それだけ操縦技術優れているということになる。

アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏
チュア氏のレース用ドローン

今後はドローン人材の育成も視野に

チュア氏は「今後は空撮だけでなく、ドローン操縦者の養成など次世代の教育にも携わりたいと考えている」という。

現在、ドローン開発の現場では、プログラミングによる自動操縦の研究開発が進められているが、GPSシグナルの届かない屋内など自動操縦が難しい場所が多数存在することから、高度なドローン操縦技術を持った人材の育成は今後必須になってくるのかもしれない。

ドローンが社会全体に及ぼす影響はまだ未知数だが、チュア氏のようなパイオニアがドローン業界をけん引してくのは間違いないだろう。

アジアトップクラスのドローン空撮パイロット、ケニー・チュア氏
週末のドローンレースを楽しむチュア氏

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