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コックピットからの視界で疾走を体感せよ、レース用FPVドローンの作り方

自作したレース用FPVドローン自作したレース用FPVドローン

最近話題のFPVレース用ドローンとは?

※FPVレースドローン自作&練習方法の最新記事(2016年版)はこちら

最近Youtubeなどで話題となっているFPVドローンレース。映画『スターウォーズ』に登場するような飛行シーンが多くのひとを魅了している。

海外ではレースイベントが数多く開催されており、ドローンレース人気が高まっていることは明らかだ。また最近では、アメリカのドローンレース主催団体「Drone Racing League」がアメフト「マイアミ・ドルフィンズ」のオーナーから100万米ドルの出資を受けるなど、将来的なドローンレース市場拡大に期待する投資家も出てきている。

FPVとはラジコン業界で使われていた言葉で「First Person View」の略。簡単にいうと、コクピットにいるパイロットの視点でラジコンを操縦するということだ。

消費者向けドローンでもっとも人気の高いDJI社のPhantomもFPVといえる。しかし、Youtubeなどで人気となっているレースで使用されるFPVドローンは「レース用」に分類され、同じドローンではあるが想定されている用途が異なる。

これは、ドローンの飛行を制御するフライトコントローラーシステム(FCS)の違いといってもいいかもしれない。

DJI社のPhantomに搭載されているFCSは、GPSデータをもとにドローンを同じ位置にホバリングさせることを目的としている。Phantomを飛ばしたことがあるひとはお分かりかと思うが、コントローラーを何も触らなければ、しっかり同じ位置でホバリングしている。

一方で、Youtubeなどに出てくるレース用ドローンのFCSは、ほとんどが素早くアクロバティックに動くことを目的としたものとなっている。代表的なFCSは「NAZE」や「CC3D」がある。

世界トップクラスドローンレーサー、Charpu氏のドローンにはNAZEが搭載されている。彼のドローン動画を見ると、ドローンがいかに素早く俊敏に動いているかが分かる。この動きはPhantomではできない。逆にいうと、NAZEやCC3Dを載せたレース用ドローンでは、Phantomのような安定したホバリングはできない。どのようなことがしたいのか、どのような映像が撮りたいのかで、使用するドローンは異なる。

Charpu氏の動画

これまでに200万回以上再生されたドローンレース

これらの映像を見て自分でもやってみたいと思った方は多いはずだ。ただ、何をどのように始めればいいのか分からないという声も多い。

そこでドローン実践企画の第一弾として、筆者が実際にレース用FPVドローンを自作し、その過程をステップごとに紹介していきたいと思う。

レース用FPVドローンの作り方:準備

まず、準備するものの一覧を下記に記載しておく。

※自作ドローンのパーツ購入はHobbyKingなどの海外サイトでも可能だ。初心者の場合、近くのラジコンショップに足を運び、お店のひとに直接アドバイスを仰ぎながら、組み立てていくのが好ましい。

FPVドローンは大きくドローン本体とFPVシステムの2つに分けられる。

本体

  • フレーム(ボディ)
  • モーター(ESC付き)
  • バッテリー
  • コントローラー/レシーバー
  • FCS
  • 配電盤

FPVシステム

  • カメラ/トランスミッター
  • モニター

フレームはさまざまな形があるので、自分の好みにあったものを選ぶのが良い。レース用ドローンで主流となっているのは250mmクラスだ。250mmとは、一番遠い2つのモーターの中心点が約250mmという意味。この他にも280mm、330mm、400mmなどさまざまなサイズがある。サイズが大きくなると、プロペラ、モーター、バッテリーなども大きなサイズを搭載できるようになる。今回は250mmクラスのカーボンファイバーフレームを使う。

250mmクラスのカーボンファイバーフレーム250mmクラスのカーボンファイバーフレーム

モーターもさまざまものがある。今回は、レース用ドローンで人気の高いT-MotorのMN1806を使用する。筆者行きつけのドローンショップに「一番パワフルなモーターがほしい」といったら、このモーターを勧められたのが理由だ。ラジコンに詳しいひとはご存知だと思うが、モーター選びではkv値というものが1つの指標になる。250mmクラスのドローンには2000〜2300kvが主流となっている。MN1806は2300kvだ。ちなみに「kv」とは、1分間にモーターが何回転するかの値。ただ、プロペラをつけるとサイズにより負荷が変わるため、回転数もそれにより変動する。

T-Motor MN1806(ESC付き)T-Motor MN1806(ESC付き)

次にモーターへの電圧を制御するESCだが、MN1806には専用のESCが付属していたので、これを使用する。モーターとESCを別々に購入する場合も多い。別々に購入する際は、ESCが好みのモーターに合うのかどうか事前に調べる必要がある。

フライトコントローラーは、CC3Dを使用する。レース用のFCSについては、CC3DとNAZEが主流となっているようだ。海外のネットフォーラムでも、どちらがベターなFCSなのか、という議題でよくディスカッションされている。これら2つのFCSはそれぞれ長所と短所があるようだが、初心者はCC3Dのほうが調整しやすいという意見が多い。  

フライトコントローラーCC3DフライトコントローラーCC3D

コントローラー/レシーバーはラジコンコントローラーで世界的に有名な日本ブランド「Futaba」の10J を使用する。

Futabaの10JFutabaの10J

レース用FPVドローンの作り方:組み立て ステップbyステップ

①ボディの組み立て

それでは早速ボディの組み立てから始めたい。ボディの組み立ては説明書に従えば難しくないので、時間をかけずに完成したいところだ。

完成したボディ完成したボディ

②モーターのマウント

ボディが完成したら、次はモーターを載せていく。気をつける点は、モーターとボディをつなぐナットが飛行中の震動で緩くなりやすいので、専用の接着剤でしっかりくっつけておくこと。飛行中にモーターが吹っ飛んではシャレにならない。

モーターのマウントモーターのマウント

モーターとボディをしっかりくっつけておく専用接着剤モーターとボディをしっかりくっつけておく専用接着剤

③ESCのマウント

モーターを取り付けたら、それぞれのモーターの電圧制御を行うESCをそれぞれのアームにつけていく。筆者は結束バンドでESCを固定した。

ESCを結束バンドで固定ESCを結束バンドで固定

④FCSのマウント

FCSであるCC3Dを機体の中央にマウントした。FCSのマウントで気をつけるべきは、マウントする方向だ。FCSにはジャイロセンサーがあり、方向や傾きを計算している。このため、マウントする方向を間違えると、ドローンが飛ばしたい方向と反対に飛んで行くということも起こりうる。

筆者の場合、ボディの構造上、CC3Dを想定されている方向ではなく、裏がえし(180°)でかつ横に90°ずれる形でのマウントとなった。このまま飛ばした場合、上下の移動が逆になってしまうということになる。コントローラーで上に行くため、スロットルを前に倒すと、下降してしまう。ただし、この時点でFCSの向きが想定されている向きと異なっても心配する必要はない。後ほど、パソコンにつなげ専用ソフトウェアで方向の修正を行うことができるからだ。

FCSをボディ中央にマウントFCSをボディ中央にマウント

⑤ESC、FCSをそれぞれ配電盤にはんだ付け

市販のフレームによっては配電盤がすでに備わったものもあり便利であるが、筆者が選んだフレームには配電盤はついていなかったため、ボディの裏側に配電盤を装着した。ここに、ESCをはんだ付けしていく。

ボディ裏側に配電盤を付け、そこに各ESCをはんだ付けするボディ裏側に配電盤を付け、そこに各ESCをはんだ付けする

⑥モーターの回転を確認

ボディ側のパーツをすべてマウントできたら、モーターの回転方向を確認していく。クアッドコプターの場合、前方左上のアームから時計回りに調べていく。前方左上のモーターは時計回りに回転すべきなので、そうなっているかを確認する。前方右上は逆時計回り、後方右下は時計回り、後方左下は時計回りになっていれば問題ない。もし、想定される方向とは逆にモーターが回った場合、ESCとモーターをつなぐ3つの線のうち2つの配線を変える。こうすることで、モーターの回転方向を変えることができる。

プロペラの回転方向を確認プロペラの回転方向を確認

クアッドコプターのプロペラの回転方向(CC3Dの場合) 出典:OpenPilot(フライトコントロール調整ソフトウェア)クアッドコプターのプロペラの回転方向(CC3Dの場合) 出典:OpenPilot(フライトコントロール調整ソフトウェア)

⑦レシーバーのマウント・調整

モーターの回転を確認・修正できたら、次はレシーバーのマウントだ。レシーバーは、Futabaのコントローラーと同梱されている。レシーバーはケースから取り出し、できるだけ軽量化することにした。

レシーバーはケースから取り出し軽量化レシーバーはケースから取り出し軽量化

レシーバーをCC3Dの下に装着レシーバーをCC3Dの下に装着

配線が完了したら、パソコンとCC3Dをつなぎ、コントローラーの調整を行う。今回はOpenPilotというソフトウェアを使う。FPVドローンを初めて作る場合、ソフトウェア上の調整は経験者にやってもらうのが好ましいだろう。調整ミスで、いきなりドローンが自分に向かって飛んできて大ケガをする可能性がなくはないからだ。筆者は今回初めてFPVドローンを作成したため、行きつけのドローンショップ「K.Kopter」のエンジニア、エドモンド氏にヘルプしてもらい、コントローラーの調整を行った。基本的な調整項目は、フライトモードの選択、回転・旋回のインプットレベルだ。

CC3Dの場合、初心者は「Attitude」モードに設定すべきだろう。これは、Phantomなどと同じで、自動的に機体を水平に保つモードだ。FCSに積まれたジャイロが機体の傾きを計算し、制御してくれる。

練習して慣れたきたら、徐々に難しいモードに移行していくのがよい。CC3Dの場合「Acro Plus」モードが最も難しい。これは、ジャイロ機能をまたっく使わないモードで、自分で機体を制御しなければならない。その分飛行中の自由度は高く、アクロバティックな動きが可能になる。筆者は約2ヵ月かけてAttitudeモードからAcro Plusモードに移行した。

OpenPilotの調整画面(初心者には少しややこしい。慣れるまで時間がかかりそうだ)OpenPilotの調整画面(初心者には少しややこしい。慣れるまで時間がかかりそうだ)

コントローラーの信号レベルも細かく調整するコントローラーの信号レベルも細かく調整する

⑧FPVのマウント

ボディパートが完了したら、FPVシステムをマウントする。機体前方にカメラ、後方にトランスミッターを装着した。トランスミッターからは、電源用のワイヤと、カメラにつながるワイヤが出ている。電源用ワイヤは機体裏側の配電盤に、カメラ用ワイヤは機体前方のカメラに取り付ける。

機体前方にFPVカメラ、後方にトランスミッターをマウント機体前方にFPVカメラ、後方にトランスミッターをマウント

⑨フライトテスト

調整が終わったら、飛行テストを行う。ここでも、ドローンの自作が初めての場合は経験者にアドバイスをもらいながら、テストする方が良い。FPVでは、初飛行の際に、初期設定のミスで墜落する場合が多いからだ。

また、自分が慣れているフライトモードで飛ばすことを鉄則としてほしい。筆者が初めて操縦したドローンは「Hubsan」だったが、そのときのフライトモードが「モード2」だった。このため、筆者は無意識のうちにモード2に慣れてしまっており、モード1ではしっかりと飛行できない状態だ。その後Phantom3を含むいくつかのドローンを購入したが、すべてモード2だ。おそらく、現在市販されている既成品の多くはモード2がデフォルト設定になっているようだ。モード2は、コントローラー左側のスロットルが上下・回転、右側のスロットルが前進・後進に加え、右・左に進む、というフライトモード。

今回購入したFutaba10Jはモード1がデフォルト設定になっていた。 筆者はモード2に慣れていたが、モード1もできるだろうと安易な考えで、フライトテストを行ったが、案の定慣れていないモードだったのでクラッシュしてしまった。このため、Futaba10Jをモード1からモード2に変更した。

テストフライトで大クラッシュし、右後方アームのプロペラが大破したテストフライトで大クラッシュし、右後方アームのプロペラが大破した

レース用FPVドローンの作り方:モニター選び

FPVドローンの操縦は、モニターの映像に大きく依存するため、モニター選びには慎重になりたいところだ。もっとも注意すべきは、映像のレイテンシーだろう。ドローンのカメラが撮っている映像がどれくらい遅れてモニターに表示されるかをレイテンシーという。レイテンシーは小さければ小さい方が良い。レースではゼロコンマ何秒の遅れが命取りになるからだ。

YoutubeにアップされているFPVレースではゴーグルタイプのモニター使用が目立つが、ゴーグルタイプはある程度慣れたひと用のモニターといってよい。初心者の場合、ディスプレイタイプのモニターを選ぶ方が無難だろう。筆者はBoscamのGalaxyD2というディスプレイタイプのモニターを選んだ。レイテンシーが極めて小さいモニターだ。

BoscamのGalaxyD2BoscamのGalaxyD2

ここまで、自作ドローンの作成プロセスを一通り紹介してきた。ドローンが完成したら、早速飛ばしたいところだと思うが、レース用ドローンは非常にパワフルなので、初心者の場合、無闇に飛ばすと一発でクラッシュして大破ということも少なくない。自由自在に飛ばすには、基礎訓練を徹底することが近道になる。

日本でFPVドローンを飛ばすときの注意事項

FPVドローンを日本で飛ばすときに注意すべきことがある。アマチュア無線免許の取得、そして総務省からの無線機器技適マークの取得だ。先ほど紹介したモニターなど外国製品のほとんどは映像通信に5.8GHzの周波数を使っている。日本では、この周波数を利用する場合、免許が必要になる。日本で無線免許を取得するには、約10時間の講習を受け修了試験に合格する、または国家試験を受験する、この2つの方法がある。詳しくは、日本アマチュア無線機械工業会(JAIA)などのサイトを参照してほしい。

また総務省の技適マーク取得については、総務省サイトの「電波の利用ルール」ページなどを参照してほしい。一般的に、技適取得には1ヵ月ほどかかるという。

筆者の住むシンガポールでは、こうした資格や技適はなしでFPVドローンを飛ばせる。日本にFPVドローンを普及させるには、飛ばすために必要なプロセスをもう少し簡略化する必要があるかもしれない。

FPVレースドローン自作&練習の最新記事(2016年版)はこちら

撮影協力:K.Kopter (シンガポールの空撮サービス会社)

テクニカルサポート:エドモンド氏(K.Kopter)


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