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自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

自分のからだの個体差を踏まえて健康増進を目指す「バイオハック」。そのアプローチとして、「食」とならんで有効なのが「運動」である。

バイオハックという言葉を聞いたことがなくとも、健康のために運動を習慣にしている読者は少なくないだろう。ただ、『Catalyst』でバイオハックの医学監修を務める渋谷セントラルクリニックの河村優子医師は、こう指摘する。

健康のために自分の好きなようにからだを動かすのは効率が悪いだけでなくて、害をおよぼすことがある。自分の運動能力を知った上で長期的な視点で運動を取り入れることが大切

過度な有酸素運動がかえって病気や体調不良など不健康を招いてしまうのは、前回の記事でお伝えしたとおり。度を越えた運動は、がんや動脈硬化などあらゆる病気の90%の原因にふくまれると言われる「活性酸素」を増やしてしまうからだ。

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では、「自分の運動能力」とはどのように把握し、またそれを踏まえた運動を習慣として取り入れるにはどうすればよいのだろうかーー。

そこで今回は、CatalystのGlobal PR担当である松本未央が、渋谷セントラルクリニックが運営する運動能力を測定するための機材がそろった施設「Doctor’s Gym」を訪れ、実践した。自分にあった本格的な運動を始めたいという人はぜひチェックしてほしい。

把握すべき「運動能力」は、次の4つに分類される。老化とともに運動能力は衰えるが、偏りがなく能力を維持・向上させる蓄積が将来不自由なく生きていくために必要だ。

  • 筋力
  • バランス感覚
  • 柔軟性
  • 心肺機能

筋力は20代をピークに、毎年約0.5〜1%ずつ低下していく。いまの自分の筋力を知るためのもっともシンプルな指標が握力だ。

カナダのマックマスター大学のレオング氏の研究チームが2015年に発表した、世界17カ国で実施した研究結果によると、「握力が弱い人は強い人に比べて、循環器疾患を発症するリスクや早く死亡するリスクが高い」。

握力など筋力の低下は、筋肉トレーニングによって抑制することができる。河村医師は言う。

筋力の低下を毎年0.5%でも抑えられれば、30年後には15%の違いになる。そのため日々の努力が自分が将来、健康的な生活をできるかを左右する

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

松本(女性・33歳)と同年の女性の平均握力は30kgだが、松本は右が26kg、左が29kgで同年代の平均をやや下回る結果となった。

続いて、バランス感覚。目をつぶった状態で片足立ちをし、同じ姿勢を維持できるかで測定。測定時間は最長3分間。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

松本は約2分ほど姿勢を保つことができ、バランス感覚は「やや優れている」という結果だった。

バランス感覚を把握し、鍛えることは、将来寝たきりになるリスクを抑えることにもつながる。日本人の寝たきりの要因第三位は、転倒・骨折。転倒はバランス感覚の欠如によって引き起こされる。

次に測定したのが、柔軟性。まず、さまざまなポーズを取って関節の可動域を検査。それに加えて、ジムにある「ゆがみーる」というデバイスを使い姿勢の分析を行う。黄色いバンドを腰、両膝、両足首に巻き、専用のカメラで撮影し、その画像を解析する。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

松本は普段デスクワークが多いためか、「猫背」姿勢と診断された。また首が非常に硬く、上半身の筋肉が緊張していたこともわかったため、医師からは大胸筋や肩甲骨のストレッチを推奨された。

続いて、心肺機能。心肺機能が低い人は脳卒中や心筋梗塞など血管系疾患による死亡率が高いといわれている。筋力と同じく年を重ねるに徐々に低下してしまうのだが、適度な有酸素運動を取り入れることで維持したり高めたりすることができる。

ジムにある「ROM」というマシンを使えば、自分の心肺機能を測定しながら、それにあった量や負荷を自動で調節した運動が可能。ROMは、「HIIT(高強度インターバルトレーニング)」と呼ばれるトレーニング方法を採用している、4分間という短時間で高負荷の有酸素運動を行える機器である。

HIITの有効性については、アメリカのオーバーン大学やカナダのマックマスター大学のチームが、中強度の有酸素運動を30分行うよりも4分間の高強度インターバルトレーニングを行うほうが5倍の運動効果があることを立証している。短い時間で効果をあげる運動法として世界中で注目されているのだ。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

ROMを使って心肺機能を測定し運動するには、ペダルに乗って全速力で自転車のように漕ぎ始めればよい。運動強度としてはかなり高く、ペダルも重たいためすぐに息が上がる。スタミナが豊富な人であればリズムよく続けれられるが、そうでないとすぐに踏み込めなくなってくる。

運動中、ROMはユーザーの漕ぐ力を感知し、踏み込みが効く持続力に合わせてペダルの重さを自動で調節してくれる。4分間経つと、停止する。

停止すると、心肺機能の測定値が表示される。一番下の「% of Target」の数値でわかるのだが、平均値が100のところ、松本は81という結果に。改善が必要と診断された。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

ジムではここまでで測定した自分の筋力、バランス感覚、心肺機能を踏まえた、運動の内容を提供してくれている。特に「パワープレート」というマシーンでは、三次元の振動を活かした効率的な筋肉トレーニングが行える。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

パワープレートの上で片足で立ち、ストレングス、ストレッチ、マッサージ、リラクセーションの4段階に分かれたポーズをとる。

自分に最適な運動の強度と種類を知る!バイオハック的運動アプローチ

一見簡単に見えるが、片足だけで立っているとマシンから伝わる振動でじわじわと体幹に負荷がかかる。

マッサージやリラクセーションのポーズではその負荷は気にならないほどなのにもかかわらず、血液循環や成長ホルモンの分泌を促進し、トレーニング後の疲労回復を促す。そのため、からだのメンテナンスにつながり、運動後の疲れを最小限に抑えられる。

短時間の無理のないトレーニングで従来の長時間の厳しいウェイトトレーニングをしのぐ効果が得られるため、運動が好きではない人や時間がなかなか取りにくい人でも継続しやすいだろう。

分析結果をからだのバージョンアップにつなげる

以上が、渋谷セントラルクリニックで体験できる、運動能力の測定とそれを踏まえたトレーニングの実践内容だ。松本の4つの運動能力の分析結果は以下のようになった。

  • 筋力:平均をやや下回る
  • バランス感覚:やや優れている
  • 柔軟性:「猫背」姿勢。首まわりの筋肉が緊張気味
  • 心肺機能:平均をやや下回る

これらの結果を踏まえ、医師からは「オールインワン」の効果的な運動の一つとして「背泳ぎ」が推奨された。全身の筋力をバランスよく鍛え、心肺機能を効果的に高められることに加え、上半身の筋肉の緊張をほぐすのに一番適しているためだ。

取り入れるべき適度な運動は人それぞれ違う。将来は、ドクターが定期的に運動能力をデータ化し、ウィークポイント(弱点)を強化していく運動療法がより浸透していくだろう。

データに基づいてからだの強化を行うことで、将来を見据えたからだのバージョンアップにつながる。やみくもに運動するのではなく、自分の目的に応じた強化ポイントを分析してみてはいかがだろうか。

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