映像表現のフロンティアを追求する下町の空撮ドロニスト 山崎友ー朗

2017.1.19

ドローン元年となった2015年に続く2016年は、ドローンに他のテクノロジーがミックスされ、ドローンの利用シーンが一気に増える年になりそうだ。ドローン利用で最も多い空撮でも、新しいテクノロジーを搭載したカメラの登場で多くの展開がある年になるだろう。

注目される360度カメラ

そのなかでも特に注目したいのは、360度カメラでの空撮だ。

というのも、今年から360度動画が急速に普及することが見込まれており、それに伴い360度カメラを使った空撮も増えると予想されるからだ。

すでに2015年にはYoutubeとFacebookが360度動画に対応。今年は「Oculus Rift」などのVR(バーチャル・リアリティ)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が世界規模で普及する見込みだ。360度動画のインフラ整備とハードウェアの普及が進めば、360度映像コンテンツの需要も高まるはず。

360度カメラをドローンに載せて空撮できる特殊技術を持つ企業・人材はほとんどないといっていいだろう。
そんななか、360度カメラ・ドローン空撮をけん引していくパイオニアが東京の下町、浅草にいる。株式会社JOUER(ジュエ)の代表、山崎友一朗さん(41歳)だ。

Image title360度動画撮影のパイオニアでもあるJOUER(ジュエ)の代表、山崎友一朗さん

10代で日本を飛び出しヨーロッパを放浪した規格外の下町ドロニスト

山崎さんは10代で日本を飛び出し、ヨーロッパを2年半も放浪した経歴を持つ、いわば型にはまらないタイプ。
ヨーロッパに行ったのも史学が好きで現地の歴史を肌で感じるためだったという、フットワークの軽さだ。

ヨーロッパから帰ってきた後、DELL、アップルを経てプロセッサを扱うIT会社で5年ほど営業・マーケティング担当として働いたが、趣味だったカメラに関わる仕事がしたいと、カメラの輸入代理店を始めた。

ドローンに初めて出会ったのは2013年。当時DJI社が販売していた「Phantom1」だった。
2015年に販売開始された「Phantom3」と大きく異なり、Phantom1にはカメラもジンバルも付いていない。
GoProを機体に固定し空撮するため、モーターの震動や風の影響で、動画をまともに撮影することは不可能だった。

この経験がきっかけとなり、高品質の空撮ができるドローンを自分で作り始めた。ドローンに関する知識はゼロだったが、自作ドローンを作っては飛ばすというプロセスを繰り返すことで、ドローンに関する知識と経験は急速に培われていったという。

ドローンの自作を始めた当初は、配線ミスなどで墜落することが多かったが、こうした失敗から多くのことを学び、今では国内トップクラスの空撮ドロニストとして映画やCMなどの多くの空撮をこなしている。

シネマカメラを搭載できる自作大型ドローンシネマカメラを搭載できる自作大型ドローン

山崎さんの強みは、カメラの知識に加え、ドローンをイチから組み上げることができるノウハウだ。これにより、クライアントの細かな要望に合わせた空撮ができる。

2015年にPhantom3が登場したことで高画質で安定した空撮が簡単にできるようになったが、映画やテレビなどの撮影現場では、「RED」や「Blackmagic」といったハイスペックシネマカメラで空撮したいという要望が多く、PhantomやInspire以上の画質が求められる。

6Kでの撮影ができるREDカメラ6Kでの撮影ができるREDカメラ

こうしたカメラで空撮するには大型のドローンが必要になるが、ドローンの組み方で揺れやしなりが変わってくる。カメラとドローンに関する高度な知識を持ち合わせ、ハイクラスの空撮ができるひとは山崎さんを含め日本では数人しかいない。


三菱地所のシンガポール市場向けPR動画ではBlackmagicカメラで空撮を行った

360度カメラでの空撮ができるのは、世界でも数人

通常の空撮だけでなく360度動画でも同じことが言える。リコーが360度カメラ「Theta」を出したことで誰でも簡単に360度動画が撮影できるようになったが、プロの現場ではより高度な360度カメラが使用されている。
山崎さんは、高度な360度カメラを使った撮影に関しても国内トップの知識・技術を持っている。

また、360度カメラをドローンに載せて飛ばせるのは世界でも数えるほどしかいないと言われているが、山崎さんはそんな数人のうちの一人だ。

山崎さんが普段使用している360度カメラは、GoPro6台をマウントするタイプのもの。
360度カメラは市場にいくつか出ているが、360度動画界隈ではこのGoProマウント型のものが主流となっている。

GoProマウント型の360度カメラ。いくつか種類があり用途によって使い分けているGoProマウント型の360度カメラ。いくつか種類があり用途によって使い分けている

リコーThetaが3万円〜4万円で買えるのに対し、GoProマウント型の360度カメラを一式そろえると50〜70万円だ。さらにGoPro6台で撮影した360度動画は8Kに相当するため、動画を編集するためのコンピュータもそれなりのスペックが求められる。個人が気軽に手を出せるものではなく、プロ仕様といえるカメラだ。

GoPro6台で撮影した映像を特殊なソフトウェアでスティッチング(つなぎ合わせ)するのだが、どのソフトウェアを使うのか、どのように編集するのか、などの知識の有無が映像の質に影響する。ここでもカメラ輸入代理店もやっている山崎さんは強みを持っている。

360度カメラでの空撮は、通常のカメラでの空撮とは異なりジンバルを使用しないため、ドローンの飛行の安定性がカギだ。

ドローンが揺れてしまえば、映像も揺れてしまうため、揺れない設計が必要になる。揺れない設計にするには、ドローン機体の素材を厳選し、それをうまく組み上げる技術が重要となる。ドローンを何度もイチから組み上げてきた山崎さんの得意とするところだ。

Image title山崎さんの自作ドローン 今もまだ試行錯誤を繰り返しドローンのクオリティを高めている

2020年東京オリンピックに向けて新たな映像表現方法を追求

急速に普及すると見込まれる360度動画だが、東京オリンピックが開催される2020年には多くのコンテンツが360度動画になっていることだろう。

360度だから可能な企画もどんどん出てくるに違いない。また通常の動画も4Kの上を行く8Kが主流になっている可能性も大きい。映像テクノロジーは今後もどんどん進化していくことになる。

山崎さんの目標はこのようなテクノロジーの進化に伴い現れる映像表現のフロンティアを追求することだ。ドローン空撮や360度カメラはこの過程の一フェーズに過ぎない。この先新たな映像表現のツールが登場すれば、先陣を切って実践するという。

同時に360度動画と空撮を掛けあわせた領域でもしっかりと足場を固め、東京オリンピックに関わるための取り組みも加速していくという。今後のフロンティア開拓の取り組みにぜひとも注目したい。

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