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深セン国際ドローンレース 世界初水上コースで注目されるも課題多い大会に

8月13日、中国・深センで国際ドローンレース「D1 Asia Cup」が開催された。

世界初となる夜間水上コースでの光と音の演出を加えたレース、そして最新のドローン搭載映像通信デバイスで高画質FPV(1人称視点)映像のライブストリーム配信と鳴り物入りで開催されたドローンレースだ。

日本、中国、韓国のほか、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどアジア各国を代表する24チームが参加した。

筆者もシンガポール代表として参加した今大会は、メディア配信や観客向けイベントなど「エンターテイメント」として見ると1つの成功事例になったと言えるが、「スポーツ」としては透明性や公平性を欠く課題の多いレースだった。

観客は楽しんだドローンレース「ショー」

「D1 Asia Cup」はドローン大手DJI社も旗艦店を構える深センの人気新興商業地区で開催されたこともあり、当日は多くの観客が詰めかけた。

Image title小雨のなか開演を待つ観客

今大会はレース開始前やインターバルなどでさまざまな演出が準備され、観客や視聴者を飽きさせない工夫がなされていた。

Image title当日は立ち見が出るほど大盛況

1つは15台のドローンによる編隊飛行だ。これはシンガポールのドローンサービス会社による演出で、音楽に合わせてドローンが搭載されたLEDライトを発光させながらフォーメーションを変えてくというもの。

Image titleドローンよる編隊飛行ショー

光と音にシンクロした複数ドローンが編隊飛行するのを実際に見るのは初めてという観客たちは歓声を上げていた。

また人気テレビ司会者によるMCやミニドローン・プレゼント企画なども観客を楽しませる演出となった。

Image titleレースの合間の演出で盛り上がる観客

レース自体も、水上に浮かぶ光るコースを高速で飛ぶドローンの姿に多くの観客が驚きの声をあげており、観客席からは盛り上がりを感じることができた。

筆者はドバイのドローンレース世界大会をはじめ、これまでいくつかの国際ドローンレースに参加したが、これほど観客を楽しませる大会を見るのは初めてだった。

Image title彼女たちはスマホアプリ「スナップチャット」でレースを実況中継

スポーツとしての透明性と公平性は欠如

一方、選手側から見ると今大会は透明性や公平性が担保されておらず「スポーツ」としては多くの課題を残すものとなった。

今大会のレースフォーマットは、6チームで構成される各グループが予選(6ラップ)を行い、各グループ上位2チームが決勝に進み、8チームで優勝を争うというもの。

当初はコース上にあるすべてゲートを通過というのがルールだったが、今回導入された映像通信デバイスの問題で特定の場所(建物の裏)で映像通信が遮断されてしまうという理由から、レース直前で一部のゲートは通過しなくてもよいとルール変更された。

Image title優勝者候補の1人韓国のキム・ミンチャンさん FPV映像通信の不具合でクラッシュしドローンは水没

しかし、このルール変更が混乱の種となり、予選本番ではゲートをしっかり通過する選手が一部いた一方、すべてのゲートを通過しない選手が続出。ゲート通過が必須なのかどうか、がまったく分からないまま予選が進められた。

Image title直前のルール変更で混乱する選手控室

さらに事態を悪化させたのが手動のタイム計測だ。通常ドローンレースではセンサーによるタイム計測が実施される。これにより、レース結果の透明性を担保している。一方、今大会では手動でタイム計測され、さらには夜間レースだったこともあり誰が何位なのか明確にならないまま、決勝進出チームが決定された。

Image titleレースを待つ選手

ルールでは、各グループの上位2位が決勝進出するとされていたが、あるグループでは1位、2位のチームではなく、3位、4位のチームが決勝に進出するという事態も発生。1位、2位のチームが異議申し立てをしたが、結果は覆ることなく、透明性を欠いたまま決勝が実施された。

Image title映像通信機器の不具合でドローンを水没させてしまう選手が続出 レース後に水没したドローンを引き上げる選手も

不透明で公平性を欠いたままファイナリストが決定され、何事もなく決勝レースが開催されたことに不満を持ったチームは多く、ソーシャルメディア上で今大会は「プロフェッショナルリズムを欠くレース」「『レース』ではなく『ショー』」などと批判。英語で発信されたこともあり、世界中に拡散し現在論争となっている。

特に東南アジアのチームに対する不当なジャッジが多く、東南アジアチームからは「今大会の主催者が関わるレースにはもう出場しない」とボイコットする発言も出ている。

またファイナル入賞者たちも「このような状態で勝ててもうれしくない」と語っており、すべてのパイロットたちにとって不満の残るレースとなった。

ドローンレース発展に向けて課題克服へ

今大会はエンターテイメント性を追求するあまり、レースのルールや設備に十分な時間と手間が割かれなかったようだ。

まだ完全にテストされていない最新の映像通信デバイスを導入したこと、ルールが曖昧だったこと、タイム計測器を使用しなかったこと、これらが選手たちの不満だけでなく、今後のレースへのボイコットにもつながりかねない事態を引き起こしてしまった。

まず主催者は今大会の参加者全員が納得する説明を行い、信頼を回復することが急務となる。

レースは主催者と参加者がいて初めて成立するもの。参加者への配慮を怠れば、信頼は失墜し次回以降のレースには参加しなくなる。これは今大会主催者だけでなく、ほかのドローンレース主催者も注意すべきことだろう。

新しいエンターテイメント、そしてスポーツとして可能性が期待されるドローンレース。建設的な対応で信頼回復に努めてほしい。



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