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CES2016 総括レポート「壮大なトライアルの時代」の幕開け

ドローンはすでにコモディティ化 差別化がカギに

米ラスベガスで現地時間1月6日(水)から4日間にわたって世界最大の家電見本市「CES 2016」が開催されている。現地に飛んだ『Catalyst』監修役の渡辺健太郎によるCESレポートをお届けする。

CES2016で感じたことは、テクノロジーの進化のスピードがパソコンが登場した約30年前とくらべて何十倍にもなっており、コモディティ化するスピードも恐ろしいほどに速まっているということ。

これは特にドローン市場で顕著だ。「ドローン元年」と言われた2015年から1年足らずでドローン市場はコモディティ化してしまったように見えるからだ。実際、今年のCESで市場のトップを走るDJIからは目立った発表はなかった。その他の企業が発表したドローンも目新しいものはなかった。

一方、ドローンのコモディティ化で、差別化を進める企業が出てきているのは好ましい状況だ。差別化の一つの方向性としてドローンの大型化がある。

今年のCESで最も目を引いたのが、この人乗りドローンだ。中国・広州市の企業 Ehang が発表したもので、最大約100kgを載せて23分間飛行することができ、操縦はタブレット内のアプリで行うという。実際飛行している姿を見ていないので何ともいえないが、完成しているのならぜひとも乗ってみたい。

Image title中国企業 Ehang がCES2016で発表した人乗りドローン

もう一つ気になったのが、フランスを代表するドローン企業 Parrot の固定翼ドローンだ。固定翼というのも差別化の一環で、他のプロダクトを見てもParrot社が差別化を推し進めているのが分かる。

Image titleParrot社のブース 

飛行機のように翼がある固定翼ドローンはマルチローター型ドローンに比べ操縦が難しいとされるが、「Parrot Disco」は自動操縦機能により簡単に操縦できるという。フライト時間は45分とマルチローター型の2倍以上で、最高時速は80km。フロントカメラからの映像は、一人称視点(FPV)で見ることができるので、鳥になった気分を味わうことができる。個人的に欲しいドローンだ。

Image title固定翼ドローン「Parrot Disco」

Image titleCES2016の会場で飛ぶParrot Disco

このほか目を引いたのは球体型ドローン「Fleye」。世界で最も安全なドローンという謳い文句で、現在クラウドファンディングのKickstarterで資金調達中だ。球体のプロテクターがプロペラを保護し、壁に当っても飛び続けることができるので、実用化されれば屋内で利用することができる。多くの用途が考えられるだろう。

Image title球体型ドローン「Fleye」

これから起こるのは「クリエイティビティの戦い」

テクノロジー、特にハードウェアのコモディティ化はとんでもない速度で進んでいる。これは、乱立する中国のハードウェア企業が圧倒的なスピードでプロダクトを出しているという状況が背景にある。

すでにコモディティ化してしまったドローン市場に日本企業が入っていく隙がほとんどなくなってしまったことは残念としか言いようがない。

一方、私たちにもまだまだ戦える余地があると分かったことは今年CESでの最大の収穫かもしれない。どういうことかというと、これからは「クリエイティビティの戦い」になるということ。

現在は「技術はあるが、アイデアがない」という状態。GPSや他のセンサー技術など、すでに実用レベルで使え、洗練されている。こうした洗練された技術を何に使っていいのか分からない状態が続いている。だから、ウェアラブルにせよ家電にせよワクワクするプロダクトにつながっていない。

ただし、今後は既存のテクノロジーが繋がり、大衆化が生まれる流れになるのは間違いないはずだ。

過去を見てみると、iPhoneは特別新しいテクノロジーを使ったわけでないが、既存テクノロジーを繋ぎ合わせて社会に大きな変化をもたらしたと言える。

これと同じようなことが2016年、2017年あたりに起こる可能性が非常に大きいと感じる。この予兆はCESで見ることできた。大きな変化とは言えないが、アイデア次第で既存のテクノロジーを繋ぎ合わせ、おもしろいものを生み出すことができることをいくつかのプロダクトが体現していた。

一つは「スマート植木鉢」。実は先ほど紹介したドローン会社 Parrot  が発表したもので「Parrot Pot」と名付けられている。植木鉢の中に水が蓄えられており、植物の状況に応じて自動で水やりをしてくれる。旅行などで家を空けるときに重宝するプロダクト。これは特に新しい技術を使ったというものではなく、既存のセンサー技術を植物の水やりに応用したもの。ペットの水やりなど他のシーンにも応用できそうだ。

Image titleスマート植木鉢「Parrot Pot」

Image titleParrot Potではタブレットで水やりが可能だ

スマート犬用首輪「WonderWoof」もおもしろい。犬の首輪にGPSを付けただけのシンプルなプロダクトだが、スマホアプリと連動することで、犬がどこに行ったのか、どれくらいの距離を散歩したのか、仲の良い犬が近くにいるか、などが分かる。これまでありそうでなかった。犬だけでなく猫や他の動物に付けて生態を観察してみるのも興味深い。

Image titleスマート犬用首輪「WonderWoof」のブース

Image titleWonderWoof は通常の首輪と見た目はほとんど変わらない

ウェアラブル分野ではセンサーを埋め込んだ靴のソール「Mettis Trainer」が際立っていた。走ったり歩いたりするときのフォームを分析し、そこからフォーム修正を促し、ケガを防ぐというもの。フォームを修正することで、ケガ予防だけでなく、走るスピードや距離が向上するので、自分のバージョンアップという視点でもおもしろいプロダクトだと思う。

Image titleセンサーが埋め込まれた「Mettis Trainer」のソール

Image title圧力センサーのデータを解析しフォームを改善する

無数の組み合わせから最適解を見つけ出せ

CESだけでなく他の見本市でもそうだが、この数年で多くの新しいテクノロジーが登場した。こうしたテクノロジーはあっという間にコモディティ化するようになってしまったわけだが、これからは既存のテクノロジーを繋ぎ合わせ、新しいプロダクトを創りだすことが求められる時代だ。

しかし、テクノロジーの組み合わせは無数だ。私たちが持つクリエイティビティを思う存分発揮しないと生き残れない「壮大なトライアルの時代」と言ってもいいかもしれない。テクノロジーの組み合わせから最適解を見つ出すには、あまりにもテクノロジーの数が多すぎる。

テクノロジーがコンシューマに行き渡ることが最適解への近道になるかもしれない。

CES2016の3Dプリンタ部門ベストイノベーション賞を獲得した Mcor社のフルカラー3Dプリンタ「ARKe」は非常に完成度が高い。しかし、3Dプリンタを使った大変化はまだ起こっていない。もし3Dプリンタがコンシューマに行き渡ると、それまで思いもつかなかったような使い方をするひとが必ず現われる。そういう状況になれば、必然的に大変化が起こり、新しい文化が醸成される。

Image titleCES2016の3Dプリンタ部門ベストイノベーション賞を獲得した Mcor社のフルカラー3Dプリンタ「ARKe」

Image title3Dプリントとは思えない完成度の高さ

ただし、より重要なのはそうした状況を待つのではなく、自分自身が常にアンテナを張り、無数あるテクノロジーにアクセスする行動力を持つこと。日本だけでなく、多くの国に足を運び、テクノロジーを自分の目で見て、体験することで、おもしろい発想を得ることができるはずだ。

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