人工知能が社会に与えるインパクト インフォグラフィックでわかりやすく解説#02

2017.1.19

前編では、「人工知能」の正確な定義や認識を解説した。それらの基礎的な知識を踏まえ、後編では世界のテクノロジスト、サイエンティストの間で議論されている、人工知能が私たちの生活におよぼす影響や未来予想図をインフォグラフィックとともにお届けする。

人工知能の仕組みについて

制作にあたり、理化学研究所で研究室を主宰し、NPO法人「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」の副代表も務める高橋恒一氏に解説者としてご協力いただいた。
本記事では、以下の項目を解説する。

1.人工知能の進化の見通し
2.人工知能が社会に与えるインパクト
3.ブームで終わらせてはいけない
4.人間不在の状況

1. 人工知能の進化の見通し

人工知能が社会、私たちのクリエイティビティーに与えるインパクトとは

この図は、2005年にアメリカの発明家 レイ・カーツワイルが作成した、約10万円で購入できるコンピュータの性能が向上する推移を表したもの。

縦軸は10万円で購入できるコンピュータの性能を、横軸は時系列を表している。2000年頃のコンピュータの知能レベルは、昆虫の脳にも満たないものだった。しかし、同氏が提唱するように順調にコンピュータの知能レベルが向上すると仮定すれば、2015年にはネズミと、2029年には人間の脳と同等の計算能力を持ったコンピュータを10万円で購入することができるようになるとされる。

カーツワイル氏は、2045年には、コンピュータの性能が地球上の人類の総人口が持つ脳に相当する100億倍にもなり、その頃には人工知能が自らを改良し人の手を離れて発展してゆくシンギュラリティーに至るための土台が整うであろうと主張している。

ただ、高橋氏によれば、研究者の間でも遠い将来まで見通せばいずれシンギュラリティーが訪れることにはおおむね合意がなされているものの、その時期がカーツワイル氏が主張するように2045年前後になるかに関しては意見が分かれているという。
なぜなら、まず第一に上の図が示すようなハードウェアの性能向上が今後30年に渡って同じように続くのかは予測にすぎないから。また第二に、「全脳アーキティクチャ」などのソフトウェアについても本格的な開発は始まったばかりであるからである。

「おおむね、2020年代まではある程度のソリッドな見通しがありますが、その後、2030年代以降、カーツワイル氏の言うシンギュラリティー・ポイントに至るまでの性能向上の継続に関しては、今後のハードウェア製造技術や計算方式の発展にかかっています」(髙橋氏)。

2. 人工知能が社会に与えるインパクト

人工知能が浸透したとしたら、「経済発展の在り方や社会の構造、人間の労働形態は大きく変化するでしょう。”第四の産業革命” に結びついてしまうのですから」(高橋氏)。それはどういうことか。

人工知能が社会、私たちのクリエイティビティーに与えるインパクトとは

高橋氏と共同で人工知能の社会への影響を考える「AI社会論研究会」を主宰する経済学者の井上智洋氏によると、産業革命以前はGDPの総額は増えていたが、一人あたりのGDPはあまり変化していなかったという。

そのギャップが生まれたのは、経済が豊かになりGDPが増えるのと同時に出生率も上がることで、増えた分のGDPが新たに増えた人口に相殺されてしまっていたからである。

それが産業革命以後は、産業革命以前の土地と労働力をインプットすることで農作物などが生産されるといった農業経済モデルから、生産の現場が工場に移ったことで工業化経済モデルへと変化。土地に代わって資本=機械をインプットすることにより、工場が稼働すればするほど新しくできた機械がもう一度工場自体を再生産していくというフィードバックサイクルが生まれた。
このフィードバックの影響がものすごく大きかったため、全体のGDPと一人あたりのGDPも格段に伸長した。

もう一つの変化は経済に科学技術が現れたことだった。農業経済モデルにおいては科学技術はそこまで重要視はされていなかったのだが、工業化経済モデルでは工場で使う機械は科学技術で作り出されていることから、科学者が一気に主役へと躍り出た。
資本と科学技術を掛け算した数値がその国の生産力になり、進歩の度合いと見なされた。

井上氏は、この工業化経済モデルに人工知能が付加されることで、生産物が増えれば増えるほど工場が再生産されるというフィードバックはそのままに、知的労働を人工知能が代替する動きがでてくるとも考えている。

知的労働の最たるものは科学の研究とも考えられているため、人工知能が進歩すればするほど科学技術の発展が早くなるという、もう一つのフィードバックが起こる可能性が十分にある。

そして、こちらのフィードバックの方が、工業化経済モデルにおいて起こったそれよりも影響力が大きいと考えられる。
つまり、科学技術のイノベーションすら機械が起こすようになるかもしれないのだ。

「人工知能のインパクトが一番大きいのは、現在注目が大きい製造業やホワイトカラーの仕事の代替ではなく、実は科学技術やイノベーションの機械化といった部分です。この部分にどうやって人工知能を応用できるかが、今後の経済発展の鍵を握ることになります」(高橋氏)。

3. ブームで終わらせてはいけない

人間が自分たちのほかに高度な知能を持つ存在を生み出すまでの道筋が見えてきた。
しかし、高橋氏は、今後の技術開発が順調に進むかどうかは、私たちが人工知能技術のポテンシャルを正しく認識できるかにかかっているという。

「テクノロジーのハイプサイクル」という言葉をご存知だろうか。

人工知能が社会、私たちのクリエイティビティーに与えるインパクトとは

これは、米コンサルティングファームのガートナーが毎年発表している、新しいテクノロジーが社会に浸透するまでに経る過程を表した図だ。それによればテクノロジーへの期待、黎明期に興り、いずれピークを迎える。幻滅期に耐え、啓蒙活動期に再浮上し、生産性の安定期を経て、社会に浸透することができる。

では、人工知能はどうだろうかーー。

「個人的な体感として、日本国内における人工知能技術への期待値は2015年のはじめころがピークで、いまはすでに下降線に入ってきていると思います。新しいテクノロジーというのは、最初は人びとがあまり理解していないため期待ばかりが高まるのです。そして、理解が進むと急に落ち込む。
一般に、ブームは過熱するほどその後の落ち込みは激しくなります。
今後早ければ10年から15年ほどで人工知能技術は特化型から汎用人工知能へともう一度大きな脱皮を迎える可能性がありますが、それはあくまで地道な技術開発がそれだけの期間継続することが大前提です。
今後迎えるかもしれないインパクトの大きさを考えれば、諸外国に比べてブームが急速すぎるベースで起こり、また急速すぎるペースで収束する気配がある日本の現状には懸念を感じます」(高橋氏)。

米国ではGoogle、IBM、Facebookなどの大手IT企業が着実に人工知能技術の応用を進めている。
また、今年に入ってGoogleが汎用人工知能の開発を公式に宣言するなど、世界は着実に進んでいる。

こういった流れは、これまでの数十年に渡る地道な研究活動があったからこそ興っているというのだということは正しく認識すべきであろう。

4. 人間不在の状況

未来の社会の構造について話を聞くうち、高橋氏は「これは最近思いついたのですが」と前置きした上で興味深いことを語り始めた。

それは、「人間不在」とも言えるシチュエーションについてだ。

「人工知能は、芸術の分野にも入り込んでくるのだと思います。表現活動というものは、人間が自分の想像力や知的能力を拡張させることで可能になったり、幅が広がったりすると思うのですが、その拡張を人工知能が人間の代わりに行うこともできるのではないかと思うのです」(高橋氏)。

例えば、音楽を聴いたり、絵や映画を鑑賞するという行為を、人間の代わりに人工知能が行うようになるかもしれない。
人工知能が代わりに視聴してくれて、自分の好みを記憶し、それを踏まえた上で、「もしも君がこの映画観ていたら、きっとドーパミンがこのくらい、セロトニンがこのくらい出ていただろうね」とか教えてくれたり。

有限の時間という制約の中で、より多くのコンテンツに触れ、自分自身を最大限拡張させるために、人間が人工知能と共存し、協働するというのは、きわめてポジティブな選択だろう。

「つまり、コンテンツを作るのも、消費するのも人工知能という世界がやってくるのではないかなと思うのです。これはコンテンツ産業にかかわらず、あらゆる産業、ビジネスにおいても言えることです」(同氏)。

人工知能が社会、私たちのクリエイティビティーに与えるインパクトとは

はたして、このような未来が本当に訪れるのだろうかーー。

いや、訪れるかは人工知能研究者、そして将来人工知能を利用する ”私たち” にかかっているだろう。

先見の明がある、ないにかかわらず、いま私たちに求められているのは、人工知能の分野で現在進行形で起きていることを知り、それとどのように関わっていくかを建設的に考え、行動を起こしていくことだ。

そのための判断材料としてのコンテンツを、これからもお届けしていく。

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