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人工知能の仕組み インフォグラフィックでわかりやすく解説#01

『Catalyst』では、研究者経済学者哲学者など、人工知能をあらゆる観点から研究する国内の第一人者たちの取材を続けてきた。彼らのインタビューを通じて、人工知能の発達によって生まれるであろうビジネス、変わっていくであろう私たちのライフスタイルを知っていただけたと思う。

読者の中には、それらのコンテンツをきっかけに、自らの生き方やはたらき方とあらためて向き合った人もいたかもしれない。さらには、今後一大産業になるであろうこの分野の可能性にかけて、専門的な知識を深め、「自らもこの分野に飛び込んでみたい」と感じた人もいるだろう。

そこで本記事では、一般の人にはとっつきにくいかもしれない人工知能の技術的知識をインフォグラフィックをまじえながらに解説していく。また、「人工知能」という言葉の定義について曖昧に感じている読者にも読んでほしい内容だ。

制作にあたり、理化学研究所で研究室を主宰し、NPO法人「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」の副代表も務める高橋恒一氏に解説者としてご協力いただいた。全脳アーキテクチャ・イニシアティブは、人工知能の分野に携わる研究者、企業、省庁、教育機関など、国内のあらゆるプレイヤーが集うプラットフォーム的役割を果たしている。

本記事では、以下の項目を解説する。

  1. 人工知能の定義
  2. 脳の「認知アーキテクチャー」に学ぶ人工知能
  3. 人工知能研究の歴史
  4. ディープラーニング

1. 人工知能の定義

知識を自力で獲得する人工知能、その仕組みをAI開発者が紐解く

「人工知能」は、「特化型人工知能」と「汎用人工知能」の2つに大別される。

特化型人工知能は、自動運転、画像認識、将棋やチェスなど、何か一つの役割に特化した技術、裏を返せばそのほかをことをしないものを指す。高橋氏いわく、「現在、人工知能研究者の95%以上がこの分野で研究をしている」そうだ。

一方の汎用型人工知能は、その名の通り特化型ではなく汎用的な能力を兼ね備えたものを指す。なにか情報をインプットすれば、それを応用して考えたり、実行することができる自律的な人工知能だ。特化型人工知能がここ5年ほどで急速に社会に浸透しつつあるのに対し、汎用人工知能の実用化の時期は「15年後あたりを目指している」(髙橋氏)。同氏が副代表を務める全脳アーキテクチャ・イニシアティブの目指す目標はこの分野である。

「これら2つは、実用化の時期や実現にいたるアプローチ、目的や獲得する機能、社会に与えるインパクトなどが異なるため、それらの違いをきちんと認識する必要があるでしょう」(高橋氏)。

2. 脳の「認知アーキテクチャー」に学ぶ人工知能

では、より高度だと思われる後者の「汎用人工知能」は、どうすれば実現できるのかーー。その有力なアプローチのひとつが、脳の仕組みに学ぶ「認知アーキテクチャー」である。

人工知能を開発する上で、なぜ脳に学ぶことが大事なのか。その理由は、人間の「自律性」にある。なぜなら、人間が作業工程ごとに人工知能にいちいち指示を出さないといけないのであれば、結局は人間がボトルネックになってしまうからである。

ここで言う自律性とは、なにか。それは、「認知=判断=行動、そしてその行動の結果を認知して、さらに次の行動につなげるという「認知行動サイクル」に途切れがないことを指します。自律性と汎用性は一見関わりがないように見えますが、実際には対応できる状況の幅が広がれば広がるほど、認知行動サイクルの途切れが減ります」(高橋氏)。

だとすれば、「脳は良いお手本です。それは、脳は高度な認知行動サイクルを実現しているため、その仕組みに学べば必要なセンサーやアクチュエータ、学習や作業記憶といったさまざまな機能モジュールをどのように組み合わせるべきかわかるからです」

汎用人工知能が、現状の特化型人工知能よりも飛躍的に自律性が高く、経済的価値の高い技術になる理由はここにある。

知識を自力で獲得する人工知能、その仕組みをAI開発者が紐解く

3. 人工知能研究の歴史

人工知能に対する社会の注目は、実はこれまで何度も “再燃” してきた。現在は「第三次ブーム期」にあたる。しかし、その研究が開始されたのは1956年。いまから約60年前にまでさかのぼる。

知識を自力で獲得する人工知能、その仕組みをAI開発者が紐解く

第一次AIブーム(1950年代〜1960年代)

  • 「人工知能」の概念を初めて提唱したのは、人工知能の父ともよばれるアラン・チューリング。
  • 計算機科学者 ジョン・マッカーシーが公の場では初めて「人工知能(Artificial Intelligence)」と名付けた。

第一次ブームの収束

  • 人間の思考過程を記号で表現し実行する「推論」と、その処理である「探索」の研究が進んだことにより、難解な定理の証明やチェスやオセロといった高度な処理がコンピュータにもできるように。
  • 1969年にマービン・ミンスキーらが指摘したニューラルネットワークの限界や、また世の中の無限の情報量に対して有限の情報処理能力しかもたないロボット(人工知能)が、現実に起こりうる問題すべてに対処することができないという「フレーム問題*」も広く認識されるようになり、多くの人びとが人工知能に落胆。第一次ブームは収束した。

第二次AIブーム(1980年代〜1990年代半ば)

  • 推論や探索のためのシンプルなルールで人工知能を実現しようとした第一次ブームとは異なり、第二次AIブームを支えたのは「知識」だった。
  • 医療や法律といった分野に関する知識を人間がコンピュータにすべて書き下すことで、人工知能が病気の診断をしたり、判例に従った法律の解釈という現実の問題を解くことが可能となった。
  • このように、専門家のように振る舞うことのできるこのプログラムは「エキスパートシステム」と呼ばれ、人工知能の「知識表現」の研究に生かされた。

第二次ブームの収束

  • 高度な専門知識は対応できても、一般常識レベルで展開される ”あいまいなこと” には対応することができなかった。
  • コンピュータがいくら知識を増やしたとしても、あくまでも文字列での理解にしかならないので、記号(シンボル)に意味を結び付けられない「シンボルグラウンディング問題」も。
  • さらに「機械翻訳問題」なども。人間による翻訳が自然であると感じるのは、これまでの経験が細かい判断材料となっているためであるが、それを人間がイチからコンピュータに書き下すのは困難であった。

第三次ブーム(2000年代)

  • ビッグデータを用いた「機械学習」に注目が集まり、従来の推論や知識表現とは異なる分野で、既存のデータを活用する研究が進んだ。
  • 顧客の購買データや医療データなど、ウェブ上に点在するあらゆるデータから相関性やパターンなどを見つけて消費者行動の解析に役立てられるようになった。
  • そして、この波を後押しするように、「ディープラーニング(特徴表現学習)」の研究が前進した。

4. ディープラーニング

現在の「第三次ブーム」の発端ともなったキーテクノロジーの一つが、おそらく多くの読者が耳にしたことがあるであろう「ディープラーニング」だ。ディープラーニングは、冒頭で説明した特化型人工知能に属する機械学習の一つとして知られている。しかし、汎用人工知能を実現する要素技術としても重要な役割を担っていることから近年注目されている。

知識を自力で獲得する人工知能、その仕組みをAI開発者が紐解く

ディープラーニング以前の機械学習するコンピュータは、人間に教わったことは、人間よりも速い速度で処理することができた。しかし、それは教わったことをあくまでも「記号」として認識しているにすぎず、それにどのような「意味」があるのかは理解できないでいた。

さらに、機械学習が高い精度で動くには、人間がコンピュータに知識をインプットするときに、「特徴量」とよばれる機械学習が対象の特徴を定量的に表せることのできる要素を的確に設計する必要があり、これが非常に難しかった。

それらの諸問題を解決するかもしれない兆しを感じさせるのが、このディープラーニングだ。上の図の画像認識で言うと、コンピュータは「ネコ」に関する大量の情報をもとに、自律的に意味を理解し、応用し、表現できるようになる。人間はその意味に「名前」(ネコなど)を与えればよい。

つまり、ディープラーニングとはコンピュータが与えられたデータから注目すべき特徴を見つけ、特徴から概念を取り出すことができるようになり(先述の「シンボルクラウンディング問題」の解決)、それを用いて知識を表現することで例外に対処できるようになる(「フレーム問題」の解決)ことを可能にした、人間の脳神経回路を模した多層構造のニューラルネットワークである。

「この段階までくれば、今後はディープラーニングとほかの技術が組み合わさることで、知識を自力で芋づる式に獲得できるようなコンピュータを作れるという道筋が見えてきた」(高橋氏)。

後編では、人工知能が私たちの未来に与える具体的な影響、そして最先端のテクノロジストやサイエンティストが議論する未来予想図をインフォグラフィックとともにお届けする。

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